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藤四郎のひつまぶし

プロの素人によるブログ

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機動戦士ガンダムユニコーンと価格差別化戦略

機動戦士ガンダムユニコーン(以下ガンダムUC)のビジネスは、顧客層を考慮し利益を最大化するよう効率的が価格設定がされていると私は考える。今回はそれについて述べてみたい。

映像作品の価格設定

ガンダムUCの価格設定に触れる前に、映像作品の価格設定を考える。

まず価格設定と視聴者数の関係。
映像作品を見るための価格を高く設定した場合、熱烈なファンしか見ることはないだろう。
逆に価格を安く設定すれば、そこまで興味が無い人でも、見てみようという気が起こるかもしれない。
これを図で表現すると次のようになる。

価格が高ければ少数しか見ず、価格が安ければ多くの人が見るという図だ。

次に、製作側の費用。視聴者一人あたりの費用を考える。
ガンダムUCに限ったことではないが、映像コンテンツは作品の製作時に人件費などの多大な制作費を必要とする。それと比較すると、完成した作品供給するときにかかる、ディスク代金、データコピー、パッケージングなどにかかる費用は小さいと考えられる。前述のものはBD・DVDを念頭にした費用だが、ネット配信などになればさらに費用が小さくなることも考えられる。その背景を考慮して、平均費用を図で表現すると次のようになる。

製作時にかかる費用が多大なため、視聴する人数が少ない場合の一人あたり費用はかなりの額になる。しかし供給の増加に対する費用の増加が小さいため、供給数が増えれると急激に平均費用が下がる。*1

この図1と図2の線A、線Bを同じ図に描き、製作側が価格をPfと決めたときに得る利益が次の図3となる。

製作側が価格Pfを決めると、線Aを参照することでその価格で見たい人の数、視聴人数Dが決まる。…1
視聴人数Dが決まることで、線Bより平均費用Cが決まる…2
これより、平均費用C×視聴人数D=合計費用Tとなり、(価格Pf-平均費用C)×視聴人数D=利益Rfとなる。
つまり図の黄色の部分の面積が製作側の利益Rfということになる。
製作側はこの利益を最大化しようと価格を設定し、それに応じて供給量も決まる。

ガンダムUCの価格差別化戦略

ガンダムUCは先行上映会と先行配信とレンタル、あるいは先行上映会でのBD・DVD販売と一般でのBD・DVDの販売のように、公開・販売方法を複数設定している。これにより、図3で価格Pfを一つだけ設定するときよりも利益が増加する。

実例としてepisode4「重力の井戸の底で」(以下ep4)について考える。ep4を上映会、先行配信、レンタルを一度きり視聴としてまとめたのが下記の表だ*2

公開方法・イベント 本編以外の内容 日時 価格
Film&Liveep4最速上映会 オーケストラライブ 2011/10/1 6,800(前売り)/7300(当日)
ep1-4イッキ見先行上映キャラバン ep1-4一挙上映 2011/10/25-11/4 2,800
ep4前夜祭 限定BD&限定ガンプラ&トーク 2011/11/11 13,000
先行配信 本編のみ 2011/11/12〜 1,000(HD画質)/700(SD画質)
レンタル 本編のみ 2012/3/23〜 100〜400?

参考サイト*3

見て分かる通り、一番最後に始まるレンタルより、先行配信の方が高価になっている。
最速上映会は筆者がオーケストラに明るくないため一概に価格を判断出来ないが、イッキ見キャラバンはep1-3分を各巻400円でレンタルしたと考えると1,600円程度、前夜祭はBD6000円、ガンプラ3000円、トークイベント2,000円と考えると2,000円程度となり、先行配信より高価に設定されているとも考えられる。

これをレンタルの価格をPf、先行配信の価格をP1、先行上映会の価格をひとまとめにしてP2として図で表すと図4のようになる。

視聴人数Dは変わらないが、価格Pf以上でも見たい人(D1,D2)に先行配信(P1)先行上映会(P2)という2つの価格で供給を行うことで、図3に比べてR1、R2の分利益が増加しているのがわかる*4

図4は一度きり視聴についてになるが、ファンによってはBD・DVDも少しでも早く購入したいと思うだろう。仮にep4を最速で視聴し、最速でBDを入手しようとするファンは最速上映会で一度視聴し、前夜祭でBDを入手することになる。その場合BDの定価6090円に対して7000円前後+13000円と、およそ3倍の売上を上げることができる。

ガンダムUCはなぜこのような手法を取ることができたのだろうか?それにはガンダムUCの顧客層が関係している。

価格差別化戦略ガンダムUCの顧客層

異なる顧客に複数の値段で商品を提供する戦略のことを価格差別化戦略という。
この戦略を取るには高価格でも商品を購入する顧客と低価格で商品を購入する顧客を分割できる、低価格で商品を購入する客が転売を行えない、他社が高価格の商品に参入できない、などの条件が必要となる。
ガンダムUCはそのような条件を満たしているだろうか。ガンダムUCの顧客層について考える。

ガンダムUCガンダムシリーズの元祖、機動戦士ガンダムと同じ宇宙世紀を舞台としている。
時間軸は機動戦士ガンダムの主人公アムロとライバルシャアの決着を描いた逆襲のシャアの3年後となっている。そのため逆襲のシャアでも艦長を務めたブライトを始め、宇宙世紀で展開されたガンダムシリーズに因縁のある人物、旧作に登場したモビルスーツやその発展型が多数登場する。
これらの要素は、従来のガンダムシリーズファン、特にシリーズ当初からアニメを見たり、プラモデルを作っていたファンにとって魅力的に映るはずだ。

機動戦士ガンダムが放送されたのは1979年。その主人公とライバルのアムロとシャアの決着を描いた逆襲のシャアは1988年に公開されている。当時、あるいはその後ガンダムファンになった子供には成人になっている人も多く、当時より趣味に費やせるお金は多くなっているだろう。
そのようなファンの中には、ずっと情熱を持ち続けているファンもいるはずだ。1ヶ月早く作品を見るために、500円や1000円といった追加支出をするのはそのようなファンだと考えられる。
それに対し、最近のTVシリーズから入ったファンや、もともとそこまで熱心ではないファンの中にはレンタルで安価に視聴しようとする者もいるだろう。

このように考えれば、ガンダムUCの顧客は高価格でも作品を視聴する層と、低価格で作品を視聴する層に分けることができる。
また期間の経過によって値段を下げる場合、低価格で購入し、高価格で転売することは不可能になる。
さらに著作権などの関係で、他社がガンダムとそっくり同じ映像を提供することもできない。似たアニメを作ることはできるかもしれないが、それはガンダムの顧客をそのまま取り込むことはできないだろう。

以上のように、ガンダムUCは価格差別化戦略を可能とする条件を満たしているため、価格差別化戦略によって利益を最大化するよう行動していると私は考える。
間違っているところ、修正追加によって正確さが増すところ、あるいは他の戦略と考えるほうが上手く説明がつくということがあれば、ぜひともコメントをいただけるとありがたい。

*1:供給が一定数を超えると追加の設備投資などが必要になり、平均費用が増加する(限界費用逓増の法則)と考えられるが、今回はそこまで供給を増加させることは考えない

*2:正真正銘一度のみ視聴の先行上映会と期間中何度も見られる先行配信、レンタルは別物と考えても良いかもしれないが

*3:機動戦士ガンダムUC episode 4「重力の井戸の底で」、映像展開開始に先駆け3つの先行上映イベント開催決定! | GUNDAM.INFO | 公式ガンダム情報ポータルサイト機動戦士ガンダムUC episode 4「重力の井戸の底で」 | プレイステーション〓 オフィシャルサイト機動戦士ガンダムUC4 レンタルDVD ビデオ ブルーレイ - TSUTAYA 店舗情報 - レンタル・販売 在庫検索

*4:厳密には配信にかかる費用、イベントの準備費用などが増加しており、純粋にR1、R2の面積分利益が増加しているわけではない