藤四郎のひつまぶし

プロの素人によるブログ

お気に入り+このサイトの新着記事

えびてんというアニメは何者か?

まずはこちらのサイトを見ていただきたい。
アニメ えびてん 公式サイト
どこのまとめサイトか、と驚かれるかもしれないが、これが7月よりニコニコ生放送で先行放送されているアニメ、えびてんの公式サイトである。
広告のようなものは総て普通のリンクであるし、どこかの掲示板の投稿をまとめたような個別の記事は、他の番組の公式サイトのようにあらすじ、登場人物、関連商品などのカテゴリー分けがされており、それぞれの目的を果たしている。

なぜこのような公式サイトになっているのだろうか?
それを知る鍵としてこちらの動画をご覧頂きたい。
D

次はこちらを。

何かお気づきにならないだろうか?
そう、曲が似ている。いやテロップをよく見れば同じ曲を使っている。
これは何を意味するのか?

スタッフを比較してみよう。
スタッフ&キャスト | アニメ えびてん 公式サイト
■スタッフ
原作:脚本/すかぢ 作画/狗神煌(月刊コンプエース連載・角川コミックス・エース刊)
監督:岡本 英樹
シリーズ構成:柿原 優子
キャラクターデザイン:渡辺 敦子
音響監督:明田川 仁
音楽:野中"まさ"雄一
音楽制作:AMG MUSIC
アニメーション制作:AIC Classic
*1

生徒会の一存 碧陽学園生徒会議事録 アニメ公式サイト
原作………………………………葵せきな狗神煌富士見ファンタジア文庫刊)
監督………………………………佐藤卓哉
シリーズ構成・脚本………………花田十輝
キャラクターデザイン……………堀井久美
音響監督…………………………岩浪美和
音楽………………………………かみむら周平
音楽制作…………………………AMG MUSIC
アニメーション制作………………スタジオディーン
*2

共通点は二点。
原作に作画あるいはイラストで狗神煌先生が入っていること、音楽制作がAMG MUSICであることだ。

ではアニメえびてんは生徒会の一存と密接に関係した作品だろうか、いやそうではない。それはアニメえびてんのPVのセリフで否定されている。

この疑問を解決するにはアニメえびてん本編を見るしか無い。
しかし本作は7/30現在タイムシフト未対応のニコニコ生放送でしか放送されていない。
よって3話まで視聴した私の簡単な印象を述べよう。

1話:聖闘士星矢のパロディ
2話:セーラームーンのパロディ
3話:ウルトラセブンのパロディ
以上。

お分かりいただけただろうか?
そう、アニメえびてんは徹底したパロディを特徴とするアニメなのだ。
公式サイトは2chまとめサイトのパロディをしており、PVは原作絵、音楽のつながりから生徒会の一存のパロディ、そして本編でも1作品ずつパロディをしていくつもりなのだろう。

このパロディの方式は個人的にはとても意義のあるものだと思っている。

パロディの長所とパロディに対する不安

私が好む作品の中にも、パロディを特徴とするアニメはある。
うーにゃー旋風を引き起こした這いよれニャル子さん、先日二期の制作が発表された僕は友達が少ない、同じく二期の放送を控えている俺の妹がこんなに可愛いわけがないなどだ。
これらはアニメ、マンガのネタやネットスラングなどを作中で用いる。
それが元ネタを知っている人に身近さ、親しみやすさを提供しているのだ。

だが私はこれらのパロディに無条件には迎合できない。

あなたはみんなで話していたと思ったら、いつのまにかあなたが知らない話題で盛り上がっていたという瞬間に遭遇したことはないだろうか。あれはキツイ。どれくらいキツイかというとアケリンが心中しようと思いつめるぐらいキツイ。
パロディも同じ危険性を秘めている。元ネタを知っていることを前提にしたパロディは、知らない人をどこかに追いやってしまうリスクがある。
さらに気になるのは人は慣れる動物だということだ。同じ元ネタのパロディを繰り返せば効果は下がっていくだろう。対策としてパロディの元ネタをどんどん変えていけば、元ネタは少しずつ分かる人が少ないモノになっていき、やがてついていける人は少なくなるだろう。

もちろん対策はある。

例えば視聴者をしっかりターゲティングし、誰にでもわかるネタにすること。具体的には貧乏神が!というアニメではジャンプ作品のパロディが使われることがある。このアニメの原作はジャンプSQ。ジャンプ作品ならば元ネタはわかるという計算があるのだろう。

あるいは元ネタを知らなくても成立する構成という手もある。俺の妹がこんなに可愛いわけがないでは主人公の高坂京介はもともとはアニメやマンガなどの知識も少ない高校生で、それらのネタに対して何を言っているかわからないというスタンスをとる。これによって元ネタを知らない視聴者は京介に共感、知っている視聴者は他の登場人物に共感することができる。

新作アニメと古典アニメ

少し話は変わるが、新作アニメと昔放送されていたアニメ、どちらを見るか尋ねられた場合、あなたはどちらを見るだろうか?
この質問を最近アニメを楽しんでいる人にした場合、私は新作アニメを選ぶ人が多いのではないかと思う。
なぜなら現在のアニメはコミュニケーションツールとしての機能も大きいからだ。

昔は現在に比べて周りにアニメファンと公言している人は少なく、遠方のファンとつながる手段も雑誌への投稿などタイムラグが大きいものが多かった。自然自分の好きな作品を1人、あるいは少数で楽しむことが多かっただろう。
しかし現在はマンガやアニメを見て育った大人も増え、社会的な理解が進んでいる。アニメファンを公言している人も増えている*3。ネットの発達は遠方のファンとのリアルタイムでのやり取りを可能にし、より気軽にアニメについて話す土壌が増えてきた。

そのような環境下で、しかも週に30本といった大量のアニメが放送されている時代で、他の人と話題の共有のできない過去の作品をあえて見る人は少ないのではないかと思う。

パロディの元ネタの面白さと元ネタの視聴

パロディが元ネタを知っている人に身近さ、親しみやすさを提供しているとは前に述べた。ではその元ネタはなぜ知られているのか?それは元ネタが面白かったからだ。ならば元ネタを知らなかった人も、元ネタを見てみると面白いと感じる可能性は十分にある。

だがある作品で知らない作品のパロディがあったとき、果たして視聴者はその知らない作品を見るだろうか?場合によっては数秒のネタに対して。私は元ネタを見る人は多くないと思う。そのままスルーする人が多く、良くてネットで調べて満足、元ネタに当たる人はごくごく一部なのではないか。

アニメえびてんの狙いとは

これらを念頭に、アニメえびてんのパロディを考えてみたい。
公式サイト、PVはかなり今に近いモノで構成されているが、各話のパロディ元は、古典とも言える作品だ。現在の新しいアニメ視聴者がみたことがない作品といってもいい。つまりアニメえびてんはパロディによって多くの視聴者に身近さや親しみやすさを提供するという目的からは若干ずれているとも言える。

ではなぜアニメえびてんはこのような古典の作品のパロディを行ったのか?
私は昔からのアニメ視聴者と新しいアニメ視聴者の交流の場と、新しいアニメ視聴者に古典に触れる機会を提供しようとしているからだと思う。

先程も言ったように、この作品の視聴者は二種類に分けられる。
元ネタを知っている視聴者と、元ネタを知らない視聴者だ。
では後者は作品を楽しめないだろうか?その可能性はあるが別の可能性もある。元ネタを知っている視聴者が解説してくれ、なるほどと思う可能性が。
アニメえびてんは7/30現在、ニコニコ生放送で配信されている。ニコニコの特徴の一つがコメント。元ネタを知っている人は「これ○○じゃねーかwww」とつぶやかずにはいられないだろう。新しいアニメ視聴者が元ネタを知るのは難しくない。

しかもそのパロディは一話まるまる繰り広げられる。一瞬のシーンではなく、一話約30分まるまる一つの作品のパロディ。これならば検索などで表面上の情報を追うだけでなく、作品を見てみようと思う可能性は増えるのではないか?

あるいはネットの知人とアニメえびてんの話をしていれば、元ネタに触れないわけにはいかないだろう。知人の反応や知識から、元ネタの作品を見てみたいと思うかもしれない。

名前は聞いたことがあるかもしれないが、見たことはない古典の作品。
そんな古典作品を見たいと思わせる作品、あるいは既に見ている視聴者には良質のパロディ作品となるよう、アニメえびてんは作られたのではないか。

*1:敬称略

*2:えびてんのサイトの情報分のみ抜粋、敬称略

*3:例えば西川貴教Gacktを思い浮かべて欲しい

*4:薄々そんな気はしてたけど

*5:https://twitter.com/kilacco/status/229386596946956288 https://twitter.com/kilacco/status/229651422801702912 https://twitter.com/kilacco/status/229652748826718209 こういうの見ると、オリジナルでなくて原作ありでやる理由が…。ほぼキャラデザだけの原作といっていい戦国コレクションが、各話で映画のパロディという似た試みをしているだけに。既に刊行してるコミックの売れ行き増とか、このあとに控えている生徒会の一存との話題作りのため、って勘ぐっちゃうよなぁ…。