藤四郎のひつまぶし

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このアイドルは右翼です。大日本サムライガール


私の名前は神楽日毬。毎日拡声器を片手に街頭演説を繰り返している真正右翼の女子高校生。
そんな私がひょんなことから防衛省の広報ビデオに出ることに。
しかもその手引きをしてくれた人は、私の政界進出の一歩としてアイドルになることを薦めてきた。
最初はアイドルなんて下衆の仕事だと思っていたけど、テレビに出ることが政治家への近道だと教わった私は、その人が私のために設立してくれた芸能事務所で活動することを決めました。
神楽日鞠、日本の独裁者になるために頑張ります!

といった内容を神楽日毬を手引きする主人公、織葉颯斗(26)の視点から描くお話。
1巻がwebで全編公開、2巻以降も期間限定で1章ずつ公開するっぽいです。
『大日本サムライガール』至道流星 Illustration/まごまご | 最前線 - フィクション・コミック・Webエンターテイメント
違いはWeb版は作中登場するブログやHPにリンクがはられていたりするところ、単行本は挿絵がある、ってところになるのだろうか?*1


私が本作を読むきっかけとなったのはこちらの記事。
至道流星、覚醒。『大日本サムライガール』 - ぱっしょん
たなみさんの記事では至道流星先生のストーリーの面白さが強調されていて、サムライガールではそれに加えてヒロインの日毬も魅力的に描かれている、と紹介されていました。

ところが読んでみましたところ、私が本作の一番の魅力だと感じたのは、ストーリーよりも日毬というキャラクターでした。
街頭で自らが真正の右翼だ、と演説するところからは、実直、豪腕、狂犬といった荒々しいイメージをいだきそうですが、そのイメージはプロローグで早速覆されます。
日毬は颯斗が自分の主張を聞いてくれた、ただそれだけで感極まってしまうのです。

次第に日毬は我を貫き通すためではなく、日本を立て直さなければならない、という責任感から居ても立ってもいられなくなってこんな行動をとったのだとわかっていきます。
アイドル活動を始めてからも水着で自分の肌を見せることにかなりの恥じらいを感じていたり、物事がうまくいくたびに颯斗へ感謝を忘れなかったり、颯斗が困った顔をしていると自分のせいなのかと悩んだりと、とても真面目でもろい部分が強調されてきます。

彼女を武器に例えるならば、バッサバッサと敵を切り捨てる日本刀ではなく、美しいながらも力を込めればポッキリ折れてしまいそうな、氷の刃といったふうです。
サムライガールとタイトルについていますが、読んでみて感じた日毬の印象は大和撫子の方が近い気がします。

それと本書の紹介では政治的な部分が強調されているように感じましたが、1巻部分を読んだかぎり、むしろアイドルマスターのようなアイドルプロデュースの側面が強いと思います。
アイドルマスターで例えると、歌の代わりに日本の将来を突き詰めて考えている千早をプロデュースしている感じです。
確固たる自分の信念を持ちながらも、それを実現する手段を知らない日毬は、プロデューサーとも言うべき颯斗には基本的に従順です。
このシチュエーションは男性の所有欲をかなり満たしてくれると思います。

やや不満な部分は、主人公の颯斗の目的が見えないところでしょうか。
例えば颯斗の行動は日毬のアイドルとしての成功を重視しすぎていて、その後の政界進出にどう結びつけていくかが見えてこない気がします。
また前述のとおり日毬は生き馬の目を抜くような芸能界や政界で生き抜くにはややナイーブに過ぎる部分があるようにも思えます。
繊細な心を義務感で無理矢理押さえつけて、理想の成就に邁進する。そんな日毬を応援することが、果たして本当に日毬の幸せにつながるのかは個人的には結構疑問です。そこについても颯斗はどう考えているかもう少し心情をみせて欲しい気はします。

といっても颯斗は古くからの実業家の家系で教育熱心な親に恵まれていながらも、大局的な戦略はついぞ不得手なままだったということが描写されています。
だからあんまり先のことは考えないやつ、ってことで納得するべきなんですかね。
むしろ柔軟性や思い切った判断には非凡さが見られますし、そこらへん曖昧にしたまま二人が最終的にどこにたどり着くかを見守るほうが楽しいかも知れません。

あとかわいい私服を持っていないという日毬が、颯斗の知り合いの力を借りておしゃれをしてきて颯斗と初デートをするという場面があったのですが、毬の服装の描写が無いことには驚かされました。
慌ててその前後何度も読み直しましたよ。
これ、読者が想像しろってことですかね? 女の子のおしゃれがわからない私には難易度が高すぎて途方に暮れました…。
まぁそこで白いワンピースに麦わら帽子、とかチューブトップにミニスカート、とか言われたらそれはそれでお、おう、とかなりそうですけど。

ストーリーについてはアイドルとしての地道な活動という興味深い描写の後に転換点がいくつもあり、緩急のついた王道かつ夢中になれるものだと思います。読み始めたらそのまま本日27日まで無料公開の2巻1章まで読んでしまいましたし。
8/27まで2巻1章無料公開、8/28から2章無料公開ということなので、興味がわいた方はぜひとも読んでみてはいかがでしょうか。
『大日本サムライガール』至道流星 Illustration/まごまご | 最前線 - フィクション・コミック・Webエンターテイメント

*1:alphabateはweb版を読みました