藤四郎のひつまぶし

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伏 鉄砲娘の捕物帳はキャラの心情に沿った粋なストーリー展開を見せてくれた

見てきたので特に印象深かったところをネタバレにならない程度にご紹介。
結論から言えば大変満足できる映画でした。

浜路の心情、観客の心情に寄り添いながら設定を魅せる序盤のストーリー

物語は山で猟師として生きていた浜路が、祖父の死を知った兄、道節に一緒に江戸で暮らさないかと誘われ、江戸にやって来るところから始まる。
この江戸の雰囲気が賑やかというかすごい喧騒というか、浜路と一緒になって観客も目を回してしまいそう。
浜路は信乃のいざこざにまきこまれながらも、文字が読めないところを助けてもらって道節の長屋に辿り着くんだけど、この道節がまた適当な男。
今度は道節に引っ張られるように伏狩りへ。
ところが道節が伏を探す途中に吉原でいなくなって、またもや浜路は周りの人に振り回されるといった序盤。

そんな展開を通して、浜路、道節、信乃の人柄、江戸の雰囲気といったものが情報量豊かに、それでいてすっと観客に馴染んでくるのがすばらしい。

浜路を中心としながらも各キャラがいい味を出す群像劇

物語は最後まで浜路を中心としながらも、浜路が関わったキャラがそれぞれの展開を見せてくれて群像劇っぽさも見せてくれる。

道節の変化・成長と飯屋の船虫とのやりとり、浜路のことを瓦版に描く冥土がその祖父であり八犬伝の作者である滝沢馬琴へ抱いている思い、歌舞伎を上演する深川一座と信乃との関わり、そして幕府の侍と道節のやりとり。
これらのサブエピソードが、主に仕草や表情、そして行動でそれとなく匂わせておいて、最後にこうあって欲しいところにきっちりと着地する。

心情を追うように変化する江戸の表情

江戸の描写で面白いのが、浜路の心情を追うように四季が変化していくところ。
桜が咲いていたと思ったら藤も咲き乱れ、その後には紅葉がはらり。と思ったらいつのまにやら雪が降ってくる。

そんなに時間がたっているの? と混乱しそうになるものの、作中時間的には何ヶ月もたっているはずがなくて、それはセリフでも確認できる。

そんな大胆な表現をまぁいいか、と思えるのは浜路の心情なりと季節がシンクロしているからか。
不穏な場面で空が曇り、悲しい場面では雨が降る、なんてそんな枠にとどまらない表現には、日本の特徴である四季をふんだんに見せようというサービス精神も垣間見える。

桜や藤の他にも数々の草花が目を楽しませてくれるほか、道節が見得を切る演出だったり、江戸だったらこれがなきゃ、というモノを一通り出してくるところなんかは、よっ、まってました!と合いの手を入れるか、粋だねぇ、と呟きたくなってしまう。

狩るということは命を奪うこと、だからこそ映えるクライマックス

捕物帳、ということはアクションシーンにも期待がかかるけど、本作は狩りというものは命を奪うことだと冒頭の浜路の狩りから徹底してくる。
なのでハッタリの効いたアクションの中に命のやり取りの悲痛さがにじみ出てくるモノに仕上がっている。

だからこそ浜路と信乃のクライマックスは、美しい演出がビシッと決まる。
あのシーンはそれまでの二人のやり取りをしっかりと追って、自分の目で見て欲しい。

伏 鉄砲娘の捕物帳、おすすめの映画です。