藤四郎のひつまぶし

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見事な日経の任天堂記事と一部の2chまとめサイトへの失望感

1/9 20:30追記:タイトルに「一部の」を追記しています

任天堂・岩田社長が語る“本当の”ソーシャルゲーム  :日本経済新聞
この記事を読んでおー、と思ったわけです。

 「販売方法の自由度が生まれたわけで、その自由度を自分たち自身で消してしまおうとは思ってはいません。ただ、そういうものが任天堂から出たとしても、それは任天堂が変節したのではなくて、新たな自由度を生かすために面白いアイデアが生まれたので使いました、ってだけ。マリオや『ポケモン』の売り方を変えましょう、という話ではありません」

 任天堂もフリーツープレーに挑戦する含みを残した岩田社長。時期については、「我々自身がこれは手応えがあるって思ってからでないと世に問うべきではない。個々のタイトルの期日を細かく決めすぎると、ひと粘りできなくなるので決めてない」と明言を避けた。

 ただし、これをもって「任天堂アイテム課金に変節、ソーシャルゲーム陣営に対抗」などと騒ぎ立てるのは早計だ。「お金を払えば払うほど有利になる」という、いわゆるソーシャルゲームで主流となっている構造を持ち込もうとしているわけではないからだ。
任天堂・岩田社長が語る“本当の”ソーシャルゲーム  :日本経済新聞
※引用者にて見出し削除

任天堂の岩田社長の説明を、必要であれば記者の井上理さんが言葉を補ってなるべくニュアンスが正確に伝わるようにしています。
それでいて岩田社長の伝えたいことを伝えるだけではなく、読者が知りたいであろうことをズバリと聞いてもいるわけです。

 こうしたビジネスモデルは、後から課金する「アイテム課金」とは分けて考えるべきであり、岩田社長は否定的に考えている。これまで決算説明会などで幾度も、「『数字のパラメーター(設定値)だけを触って何かのカギを開けるとか、何かがものすごく有利になるとかという形で課金する』ということを追求すると、確かに短期的に収益は上がるのかもしれませんが、お客さまと私たちの間で、長期的な関係は作れない」などと話してきた。

 この部分を掘り下げるべく、岩田社長に「射幸心をあおって課金を促す手法について、どう考えているのか」と突っ込んで聞いた。任天堂プラットフォームでゲームソフトを提供しているゲーム会社の多くは、GREEやモバゲーにソーシャルゲームを提供している。だからであろうか、岩田社長はひとつ1つ言葉を慎重に選びながら、話し始めた。

 「私には私なりに思うことは当然あります。自分の商道徳から考えて絶対に受け入れられないことをやっている方たちがいるのも事実です。ですが、私の今の立場でそれを外に向かって発言できるかっていうのは、また別の話でね。しかも、今うちの業績が何の問題もないならいざ知らず、ずっと長いあいだ続いていた記録を途絶えさせてしまった張本人である私が他社さんのサービスについてあれこれいうのは、これは違うだろうと思っている」

 「ただ、我々は、お客さまが(任天堂や同社のゲームに)どれだけ敬意を持ち続けていただけるかで、長期的な関係が築けるかどうかが決まると思っているんですね。私は、そっち(射幸心をあおる手法)にいかなくても、ゲームビジネスの健全性を維持してみせると思ってやっています。それを世に示した1つの例が、どうぶつの森ですね」

 「どうぶつの森を楽しんでいただく人がもっと増えて、もっと社会で話題になって、これが本物のソーシャルゲームだといっていただけたら、世間の見方が変わるチャンスかもしれませんね。ただね、これが本物かどうかを決めていただくのはお客さんなんで、私がこれが本物ですというわけにはいきませんから。これが質が高いソーシャルゲームだよねとか、これが本物だよねといっていただける方が増えるといいなぁという以上には言えないですけどね」

 「任天堂任天堂なりの方法でソーシャルゲームを発展させ、健全なゲームの世界を守り抜く」――。岩田社長の言葉を咀嚼(そしゃく)すれば、そういうことになる。
任天堂・岩田社長が語る“本当の”ソーシャルゲーム  :日本経済新聞
※引用者にて見出し削除

こうやって任天堂の信念と今の任天堂を取り巻く状況を結びつける話を引き出すわけです。岩田社長の抑制の効いた言い回しには岩田社長なりのビジネスと理念のバランス感覚を感じます。取材をする側、される側が緊張感を切らすことなく、しっかり噛み合ったすばらしい記事なのではないかと思います。

で、それが2chを経由して、一部の*1まとめサイトにまとめられるとこうなるわけです。
任天堂・岩田社長 「任天堂のゲームは本物のゲーム。モバゲーのゲームは偽物。これが任天堂の考え」 ニュー速(`・ω・´) みっくちゅじゅーちゅ
で、その記事の先頭にあるのがこのインタビューの引用です。

どうぶつの森を楽しんでいただく人がもっと増えて、もっと社会で話題になって、
これが本物のソーシャルゲームだといっていただけたら、世間の見方が変わるチャンスかもしれませんね。
ただね、これが本物かどうかを決めていただくのはお客さんなんで、私がこれが本物ですというわけにはいきませんから。
これが質が高いソーシャルゲームだよねとか、これが本物だよねといっていただける方が増えるといいなぁという以上には言えないですけどね」
任天堂・岩田社長が語る“本当の”ソーシャルゲーム  :日本経済新聞

この部分も引用されているわけです。

さすがにため息をつかずにはいられませんでした。
確かに日経の井上記者の相手の意見を正確に汲み、表現する力は並々ならぬものがあると思います。
しかしいくらそれらの力がなくとも、この日経の記事からこのタイトルでまとめを作ってしまうようなことは理解に苦しみます。
こんなまとめになってしまう力しかないならば、情報を扱うサイトを運営するべきではないのでは? などとも思ってしまいます。

もちろん情報ソースではこう言っているが、本音はこうに違いない、って考え方もあるとは思います。
あるとは思いますが、それはタイトルでやるべきことではないし、本人が語ったように誤解させないよう慎重にやるべきでしょう。
具体的には、情報ソースではこう言っているが、以前こんなことも言っていたから本当はこうだろう、というべきではないでしょうか。
根拠なしでいや、本当はこう思っているはずだ、って言い方も否定しきれるものではありませんが、いずれにしろこのタイトルは私には受け入れ難いです。


一応このまとめサイトのやり方を擁護できる部分についても述べます。

まず一つはセンセーショナルなタイトルで注目を集めることで、本来ならば情報が届かない人に情報がいく可能性です。
冒頭で私は岩田社長の抑制の効いた発言と井上記者の意見の汲み取り方とその表現がすごいと言いましたが、その分文章は長めに、あえて、本当にあえて言えば、まどろっこしいものになっていると言うこともできなくはありません。
人はセンセーショナルなものに惹きつけられる部分がどうしてもありますので、とにかく人目につくためにセンセーショナルなタイトルをつけ、多くの人に見てもらうというのは一定の合理性はあります。

しかしその合理性と代償に情報ソースの誤読を引き起こす可能性も増えます。
現にまとめの記事ではタイトルに引っ張られて日経の記事を誤読しているとしか思えない書き込みもあります。

また記事を書いた井上記者、インタビューに答える岩田社長、そして任天堂日経新聞の関係者、あるいはさらに多くの範囲の人がこの記事を見て、不快に思わない人がいないとは思えません。
任天堂や日経に直接関係ない私が不快に思ってるのですから。

注目を集めるという長所は、この2つの欠点を上回るほどの合理性があるとはどうしても思えないのです。

もう一つ擁護しようとできる考えはまとめサイトはあくまで2chの情報を引用するだけで、むしろスレッドタイトルなどもいじらない方が趣旨に沿っている、という考え方です。
ただこれも自分は一貫性を欠いていると思っています。

まとめサイトはスレッドの書き込みのうちいくつかを抽出しており、時に幾つかを強調するように編集しています。
それはまとめサイトの管理人の意志が入っており、すでに2chから引用しただけとは言いがたいと思うのです。
管理人の意志が入っているならば、その編集に責任が発生すると考えるのはおかしくないと思っています*2

書き込みをしている人たちだけで見ているのであればまだいいのですが、実際に2chのスレッドを見ている人以外もその情報にアクセスする以上、まとめサイトは情報を発信しているという自覚を持つべきではないでしょうか。

なのでまとめサイトとしてやはり間違った情報、誤解を招く表現は断りを入れるなどして編集、あるいは弾くなどする、あるいはそれで迷惑がかかる人へのケアをしっかりとするといったことが必要なのではないでしょうか。

長くなってしまいましたが、一部の*3まとめサイトに対する私の意見としては以下のとおりです。
1.情報ソースから明らかに乖離しているタイトルはつけるべきではない。
2.情報ソースで述べられている意見が建前だと思っても、推測したものをあたかも事実のように表記すべきではない。それは本文中で情報ソースの表現はこうだが、本音はこうであるはずだ、などと言及すべき。
3.注目を集める効果があっても、それ以上に人に迷惑をかけるのであれば上記のような編集をするべきではない。
4.2chの書き込みをまとめるという趣旨であっても、管理人の編集したものをもともと書き込みをしたユーザー以外の人が見る以上、まとめサイトは自分の書いた記事に責任が発生することを自覚して行動すべき。

嘘を嘘と見抜ける人云々という言葉もありますが、現状それを周知徹底するのが難しい以上、情報を発信する側にもそれなりの心構えを持っていて欲しいと思わずにはいられません。

1/9 20:30追記:訂正すべき部分、言及が足りていなかった部分などについて追加の記事を書きました。
日経任天堂記事への賞賛と一部まとめサイトへの苦言記事に追記しなければならないこと - 藤四郎のひつまぶし

*1:1/9 20:30「一部の」を追記

*2:ちなみに別件なのですが、私が唯一まとめサイト(管理人の@numenunu ぬんぬんさん曰くメモ帳代わり)でRSSリーダーに登録して現在もよく見ている主にライトノベルを読むよ^0^/さんを自分のお気に入りリンク集と勝手に他己紹介から外した理由もまさにそれです。『ナイトウォッチシリーズ』「ぼくらは虚空に夜を視る」星海社文庫版が回収 - 主にライトノベルを読むよ^0^/という記事に正確でない情報が含まれており、『ナイトウォッチシリーズ』「ぼくらは虚空に夜を視る」回収はデマ - 主にライトノベルを読むよ^0^/という記事になりました。この後者のまとめで、謝意の表明もなく、逆に『>「2ちゃんねるのまとめ」という「エンタテインメント」は「エンタテインメント」としてだけ楽しむべきだと思う。ほんとにそう思う』という自己弁護やヘタしたら挑発とも取られかねないコメントを残しているのが、おすすめのサイト一覧と紹介文と認識されるであろうページに載せておくのにかなり抵抗を感じたのです。じゃあこれ以外にも誤報が度々あるかというとそこまで問題が膨れ上がったものは無さそうですし、この記事にしても元記事にはデマだったという記事へのリンクを張って最低限すべき情報の追加・訂正はしていると言えないこともないですし、通常の記事は私の力ではあまり発掘できていない情報を得られ、メリットがとても大きいと思っているので煮え切らない態度でいるのですが…。全部の記事の裏を取るのは労力に対してメリットが見合わないようには思うのですが、間違った情報を拡散して迷惑がかかった人がいるのならその人にご迷惑をお掛けしましたと表明しておくことは労力の割に幸せになる人が多いように思います。それがポリシーに反するならもっと大々的に2chからのまとめなので情報の正誤の確認はご自分で、みたいな一文をサイトに来る人は必ず見るであろう部分に入れておけば…などとも思います。ただこれもある意味読者が情報の正誤は自己責任で判断するだろうという読者を信頼しての方針、と言われればわりとうーんとなるところなんですが

*3:1/9 20:30「一部の」を追記