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藤四郎のひつまぶし

プロの素人によるブログ

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ヤマノススメはアニメ化しちゃいけない、ってホント?

ヤマノススメ一合目を見て - とある青二才の斜方前進

ぱらぱらと色んなサイトを渡り歩いていましたらこちらの記事にたどり着きまして。
最初はこちらの記事、今月19日のセンター試験の問題として出題したら面白いかも、と思ったんですが、よくよく読んでみたらむしろ大学の講義で使用してもいいかもしれないな、なんて思いました。

記事中で主張されている事柄が多く、記事のボリュームもありますので、個別の事項に言及する前に、@tm2501 TMさんの主張を私なりに要約してみます。

TMさんの主張のalphabate的要約

メディアミックスについて

原作が一定の評価を受けていない場合、アニメ化はするべきではない。
そのような安直なアニメ化はヒットしないリスクが高く、アニメ制作側の負担が大きい。
にもかかわらず原作側はリスクなしに宣伝効果を得られるのはおかしい。
アニメ化される原作は一定の評価があるという前提も曖昧になるため、視聴者側の作品選びの参考情報が一つ機能しなくなり、不利益を被る。
またメディアミックスはそれ自体が嬉しいのではなく、コンテンツが愛されながら大きくなっていくことが嬉しいのであるから、その点からも安直なメディアミックスはするべきではない。

しろさんについて

ヤマノススメの作者しろさんは人気はあるようだが、実力には疑問がある。
同人誌は実用系とも言いがたく、萌えも見いだせなかった。
ヤマノススメも多大な売上を上げたとは聞かず、長期連載ではなく、さらにニコ動やアマゾンでのコメントを見る限り、実用度、萌えともに今ひとつであると言える。
よって前述のメディアミックスの条件を満たさないため、ヤマノススメはアニメ化するべきではない


他にも細かい論点はありますが、大まかにはこのようなところだと思います。
一応全文を順番通りに箇条書きでまとめたものも最後に書いておきます。
元記事ではこんなこと言ってなくね? という方はそちらと元記事を照らしあわせて教えていただけるとありがたいです。

さて、こちらについて個人的に思ったことを二点ほど述べたいと思います。

経済的側面から見て、「安い」企画が増加することはアニメ制作側によくないことか

TMさんの記事ではアニメ制作側を一つの存在として扱っているように見られますが、それらを幾つかの単位に分解すると、また違った姿が見えてくる気がします。

まず、このアニメ制作側なのですが、読者の皆さんとも共通認識ができているかわからないので、ここで一つのPDFを取り上げたいと思います。

アニメーション産業取引実態調査報告書 - 経済産業省

こちらの5ページの図を御覧ください。
製作委員会/テレビ局等を一番上において、業務の流れ中心に図示されています。
ケースによってはこれに当てはまらないものも多いと思います。
しかし手軽に見られてわかりやすいと思うので、これに準じて述べたいと思います。

図を見るとわかるかと思いますが、アニメ制作側と言っても立場は様々です。
発注者を中心に見れば、製作委員会が元請会社への発注費や宣伝などの費用全般を負担し、場合によってテレビ局などと交渉して放送し、各種商品で儲けを得る形になっているといっていいでしょう。

受注者側から見れば、実際に原画や動画を書く人、アニメーターは元請会社、グロス請会社らから発注をうけ、それらの会社は製作委員会から発注をうける立場になっています。

この関係の場合、元請会社、グロス請会社、アニメーターら個人事業主の受け取る代金は、受注内容の変更などがなければ、発注時にほぼ決まると想像できます。

つまりアニメが不幸にして商業的に芳しくなくとも、発注時に代金が決まっている以上、短期的にはこれらの会社や個人の収入が急激に少なくなるとは限らないのです。

このような場合、出版社(=製作委員会、あるいは製作委員会に作品の利用を認める代わりにロイヤリティを得る立場)がアニメ作品を増やしたいと思ったらどうなるでしょうか?

需要と供給の関係から単純に考えれば、受注価格は増加する傾向になるはずです。
元請会社らの数が変わらずに需要が増えれば、ある作品で低い受注価格を提示されたとき、もっと高い受注価格を提示する作品が存在する可能性が高まり、そちらを選択できると考えられるからです。

なのでTMさんの記事の、少なくとも経済的側面については、アニメの増加がアニメ制作側の負担を増やすとは言えません。


…となれば話は単純ですがそういうわけでもありません。
先ほどのPDFでは、調査対象の元請会社から個人までの取引について、下請法上問題がないかと下請法以外についても問題と思われる事例があげられています。
そこで注目したいのが価格決定のタイミングとスケジュールの問題です。

例えば32ページでは発注段階で代金が確定しているかというアンケートに、確定していると答えたのは41.7%でした。
業界全体として半分以上が代金が確定しないまま作業に入っているようです。

これでは仕事を受ける前から受注価格を比較するのは難しいですし、作業に入ってから望まない金額に決定してもすでに作業を進めている以上その金額を飲むしかなくなる場合もあるでしょう。
つまり需要が増加しても受注価格が上昇しない可能性があります。

スケジュールに関してはフリーアンサーとして、他の意見より多い数が47ページにまとめられています。
そこでは発注者側のスケジュール管理が甘く、特に作業の後工程で効率的な作業ができないなどの意見がまとまっています。
スケジュールの問題にアニメ作品の数が影響していないとは考えにくく、受注できるアニメ作品が増えてもそれ以上に費用が増加し、利益は変わらない可能性もあります。

その他にも、アニメスタジオの数に対して、製作委員会に入るような会社、例えばテレビ局や広告代理店、BD・DVDメーカーといったところの数が少なく、寡占的状況になっている可能性もあります。
あるいはそうでなくともアニメーターやアニメスタジオの制作費が慣習としてほぼ決まっている可能性もあります。
このような場合需要が増加しても受注価格はなかなか変わらないのではないでしょうか。
そうなっていればアニメをこなせる数は大きく変わらない以上、いくらアニメが増えてもその収入が元請会社やアニメーターに落ちてはいきません。

などなど、アニメが増えるとアニメ制作側の負担が増える、ではやや乱暴に思うのです。
TMさんはこの辺をどのように考えていらっしゃるか、お聞きしたいなぁなどと思いました。


ちなみに横道にそれますが、最近アニメスタジオの京都アニメーションが製作委員会に名を連ねていることをみかけます。
これはコンテンツの二次利用でも収益をあげられるように動いていると見ていいでしょう。
この製作委員会への出資はヒットした時の収益は高くなりますが、ヒットしなければ受注だけの時より収益が下がります。
商業的に芳しくない結果が続くと一気に企業の体力(=金)が奪われてしまうでしょう。
なので資金力に不安のあるアニメスタジオでは容易に真似できることではありません。

ここからちょっと飛躍が入ってしまいますが、一般の方々が想像しそうな、ヒット作を出すアニメスタジオやアニメーターにもっとお金が落ちるようにしたいといった場合を考えてみたいと思います。
コンテンツの二次利用でアニメスタジオやアニメーターにもお金が入るような契約を結んでいたり、アニメスタジオがアニメーターへ一定以上の価格で発注していたりする場合には助成金を出すといった仕組み、なんてものはどうでしょうか?
まぁ上のは業界を知らない素人の浅はかな知恵でしかなくてトンチンカンなことを言っているかもしれませんが。

実用度も萌えもイマイチならアニメ化すべきではないのか?

まず私はアニメヤマノススメを楽しく見ています。

そして原作漫画も1話の試し読みをした時点では、控えめに言っても最後まで気軽にすらすら読めるマンガだと思いました。
ヤマノススメ | 連載作品 | コミック アース・スターONLINE
少なくとも個人的にはアニメ化がおかしいとまでは思いません。

ただ確かな評価眼を持つ方の中には実用度も萌えもイマイチと感じる人がいるかもしれないというのは理解はできます。
しかしこのヤマノススメは、登山の魅力を知らない人や、逆に萌えの魅力を知らない人が読むと考えると、面白いポジションの作品なのではないでしょうか。
どちらかの取っ掛かりとして、萌えと山の魅力&知識を組み合わせた作品は悪くないのではとも思います。
この辺は先日も同じ内容の記事を書きましたのでそちらも参照してもらえると嬉しいです。

ある作品が車輪の再発明かどうかは受け手によるんじゃないかなー - 藤四郎のひつまぶし

少なくとも私はヤマノススメの萌えについては十分にアリだと思っています。
登山についてはよくわかりませんが、萌えから入って登山に興味を持つという視点では、この作品がアニメ化されるのも納得できる気がします。

TMさんがすべての能力で自分をしのいだブロガーと記事中でも述べている岩崎夏海さんがもしドラで使った手法に似たものでもありますし、この観点からはどんなふうに思われているのでしょうか。

最後にちょっと気になったこと

私の思ったことは以上二点です。
最後にちょっと気になったのですが、島田紳助さんの『宣伝という経済活動は諸刃の剣である』という理論はどのようなものなのでしょう?
そのままグーグル検索してもそれらしいものが見当たらなかったので、気になっています。
私の宣伝に関する理論では、ザイアンスの単純接触効果というものがまず念頭にあります。

単純接触効果 - Wikipedia

何度も見聞きしていると次第に良い感情が起こる、というもので、具体的には売り場ではよくCMで見かけるものを手に取る、知らないものは手に取らない、といったものです。
選挙カーで候補者が自分の名前を連呼するのもこの効果を狙ってのものですね。

島田紳助さんの理論がどのようなものかわからないのでどちらが正しいどうこうではないのですが、詳しい内容なり知っている方は教えていただけるとありがたいです。


…といったところが本文です。
あとはTMさんの元記事を私なりにほぼ順番通りまとめたものを記載します。
ヤマノススメ一合目を見て - とある青二才の斜方前進
なるべく元の記事の表現を使ってまとめていますが、※から始まる文章は私の解釈を述べています。

1.原作のあるアニメは安直に作ってはいけない
A.多くのお金がかかる上に人をいっぱい巻き込むから
B.アニメ側に原作がある、アニメ側が原作を大きくいじれるならアニメ化の条件は多少緩くなる
C.条件A:商業的に売れた原作であること
D.条件B:原作を改造できる放送の尺があること。このどちらかあるいは両方が必要
E.アニメ化はリスクを回避できる根拠がないといけない
※ここでのリスクは作品が低く評価されること、商業的に厳しい結果になることを指していると思われます。
F.アニメ会社がリスクをマネジメントできる権利がある or 原作に商業的実績が必要
※ここでのアニメ会社は大きく2つ、BD・DVDソフトを販売するメーカーとアニメ制作スタジオが考えられますが、恐らくそれらを含む、アニメを作り、販売する会社一般を指していると思われます。

2.ヤマノススメのアニメ化の場合
A.多大な売上を上げたとは聞かない
B.原作が長期連載されてきたものではない
C.3分アニメなのでアニメとマンガを微妙に別物にする尺がない

3.マンガサイドから見るアニメ化
A.アニメ化は信用と売上実績の積み上げがあってこそされるもの
B.その前提があるためにアニメ化されたマンガ家には箔がつく
C.自分のコンテンツを手間暇をかけずに多くの人に紹介できるため、マンガ家の作品を簡単にアニメ化する訳にはいかない
※直接的には言及されていませんが、過去のアニメ化作品のブランドにタダ乗りするフリーライドへの問題提起と受け取れます。
D.名誉的にも宣伝的にも経済的影響力的にも本当に面白いもの、人気のあるもの、アニメ会社がリスクを取ってでもやりたいことでしかアニメは作ってはいけない
※名誉=マンガ家の箔、宣伝=ブランドイメージ、経済的影響=アニメ会社の収益と読み取れます

4.遊び半分の商用アニメ
A.遊び半分の商用アニメを作ると儲からない分は誰かが負担する
B.遊び半分の商用アニメを作るとアニメーターの手間暇は徒労に終わる
C.遊び半分の商用アニメを作っても、マンガ家だけは損をしない
D.よって遊び半分の商用アニメはダメ
※遊び半分の商用アニメ=安直なアニメ化と言い換えてよいでしょう。
※ここではアニメ化のフリーライダーがマンガ家であるとの指摘がされています。ここではヤマノススメについての言及なので触れられていませんが、マンガ家を原作者、あるいは原作を管理している出版社などに拡張もできるでしょう

5.TMさんの考える、マンガ家のためにも、アニメーターのためにも、出版社から見ても、オタク(消費者としての顧客)から見ても功利を最大化できる環境
※ここまでより、多大な売上を上げた作品、あるいは長期連載されてきた作品のみがアニメ化されるべきと読み取れます

6.出版社からみるアニメ化
A.ダメなものは宣伝するとダメであることを晒してコンテンツの寿命を縮める
※ここでの宣伝はアニメ化と考えられます。
B.良いものでも「良い状態を維持できる範囲以上宣伝すれば、悪循環を生む」
C.島田紳助の『宣伝という経済活動は諸刃の剣である』理論
※今回のヤマノススメに関してはTMさんがマンガもダメといっているので宣伝に関する後の2つの理論は胸に留めておくぐらいでよさそうです。

7.アース・スターは間違っている
A.雑誌の宣伝のためのアニメを2つも作るのは間違っている=頭が良いやり方だとは思えない
B.原作の発表された分量が少なく、人気も不透明でアニメーターに与える尺も予算も少ない=あさましいコンテンツ
※ここでのアニメーターはここまでのアニメ側、アニメ会社などと同等のものと推測されます。アニメ制作の実態として、契約上はアニメーターがアニメスタジオの仕事の請負(下請け)となる場合が多く、原作側がアニメーターと直接予算のやり取りをすることはないのではないかと思われるからです*1。アニメスタジオの予算が少ないため、波及的にアニメーターに渡るお金が少なくなるという表現と思われます。

8.アニメーターの現状
A.アニメーターがアニメを作ることの納得は「今日明日食いつなげるほどの仕事だから」
B.キャリアにならない作品でも仕事を請け負わねばならない
※キャリアにならない作品=質の低い作品と読み取れます
C.そのような現状がアニメそのものの供給過多と質の低下につながっている
※この段落ではアニメ製作会社とアニメーターという単語の両方が使われているので、両者を特に区別なく扱っていると推測できます。

9.安い企画、儲けがすぐ頭打ちしてしまう企画は視聴者も幸せにならない
A.アニメ化=話題になっていると受け取り、原作にお金を払うひとは多い
B.その場合原作側は「面白いと保障したわけじゃないし」と居直ることはできない
C.もし居直るのならば宣伝手法への自己矛盾になる
※アニメ化という宣伝手法は5の環境下ならば効果を発揮する。逆にアニメ化されたものが5の環境下で生まれたものではないと居直るのであれば、そもそもアニメ化というものは宣伝になっていないという主張と思われます。
※ただこの主張は若干トートロジーっぽくも感じるのですがよくわかりません。
※この段落は「アニメをチェックする時間」「僕はそれほど熱心でもミーハーでもないけど」あたりがどこにかかっているかわからなかったり、上の解釈も自身がなかったりと読み取りに不安が残ります。

10.しろってなんなの?
※少し主題とは離れますが、芸能人やクリエイターを批評するときは呼び捨てにする文化も見受けられるとはいえ、ここまで乱暴な文体で批判をするのであれば、逆に敬称をつけるべきではないのか? とは思います。以下私の文章ではしろさんと表記します。

11.しろさんの受ける恩恵
A.暴論だが詐欺に近いモラルの崩壊に絵師が手を貸し、結果的に最も恩恵を被っている。
B.出版社に企画をねじ込んだのは作者本人なのではないかと勘ぐりたくなる
※この企画とはアニメ化のことと思われます。実際個人の力でアニメ化の企画を通せるかは1-Aでも出たようにお金と人手の問題があるので疑問ですが、ここではオーバーな表現を使っているのでしょう。

12.しろさんの人気と実力
A.しろさんについては人気はあるが絵は認められないと考えている
B.かき分け、綺麗さ、背景や構図の柔軟さなどで実力を持つ人を羅列できる
※おそらくしろさんよりもそれらの能力が高い人を羅列できるという意味だと受け取れます。また後の段落の、部分的に僕の実力を上回る人はいてもすべての能力で上回る人は片手の数ほどしかいない、より、個別の能力ではなく、すべての能力を上回る人を羅列できるという意味でしょう。
C.彼のサイトの絵を見ると、色彩やファッションに売れている理由を多少感じるが、バリエーションが少なく、万人向けというわけでもない。
D.白黒やマンガになると良さもなくなる
※色彩という長所が封印されるのは確実でしょう。ファッションについては比較しないとなんとも言えません。
※ちなみに私はしろさんのサイトの絵を見ていたら、どんどんうまくなっているように感じました。特に眼を中心として表情が豊かになってきたように感じます。まぁ私は絵については素人なので見当違いのこと言ってるかもしれませんが。

13.ヤマノススメの内容
A.しろさんが山に精通しているか疑問
B.同人誌では実用系とはいいがたく、萌えも見いだせなかった
C.ヤマノススメについても同様でニコ動やアマゾンにも同様のコメントがある
D.読んでいないが読んだら作者を潰すレベルの批判を書く

14.アース・スターへの批判
A.メディアミックスはそれ自体が嬉しいのではなく、コンテンツが愛されながら大きくなっていくことが嬉しい
B.それをわからない人がメディアミックスありきでコンテンツを語らないで欲しい
※おそらくここのコンテンツを語るとは「漫画から始まる、メディアミックスコミック誌」というキャッチコピーのことと思われます。
C.声優グラビアは雑誌としては斬新かもしれないが声のイメージを大事にするという観点からは否定的
D.声優のアイドル化はキャラクターのイメージを壊す危険性がある

*1:ヤマノススメがそうである保証もありませんが、アニメーション制作としてエイトビットがクレジットされているので大きく体制が違うとは思えません