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藤四郎のひつまぶし

プロの素人によるブログ

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見えない姿を聞く。新世界より19話

アニメ 新世界より 演出 考察


新世界より19話は呪力の恐ろしさが全面に出た話でした。
その雰囲気はホラー。
常人には太刀打ちできないモノに怯え、なんとか逃げようとする早季たちの姿が印象的です。

そんな早季たちの姿に対して、早季たちを追い詰める「あいつ」の姿は最後まではっきりと見ることができません。
しかし一ヶ所「あいつ」の姿を連想させる表現がありました。
それは足音です。
この足音は恐怖で病院から逃げた人と班長が「あいつ」の餌食になり、それについて野口医師に覚が食ってかかった場面で聞くことができます。
Download*1

この足音を聞いたとき、私はおっ、と思いました。
原作既読のため私は悪鬼が誰なのかを知っているのですが、この足音はそれをしっかり表現していると思ったのです。

ちなみに新世界よりの原作では該当シーンはこのように表現されています。

「あれは、いったい、何なんだ?」
覚が、震える声で、野口医師を詰問する。
「わかってるだろう?誰でも知ってるはずだ。あいつは……」
野口医師は、急に口をつぐみ、手真似で、わたしたち全員に、静かにするようサインを送った。
わたしは、はっとして耳を澄ませた。
聞こえる。足音だ。さほど体重はなく、歩幅も小さいようだ。ゆっくりと病院の玄関に近づいてくる。
貴志祐介新世界より 下(講談社文庫) P144

状況の変更に加え、原作ではゆっくり歩いているのに対しアニメでは小走りになっていたりとアレンジはされています。
ですが「さほど体重はなく、歩幅も小さいようだ」という意味合いは変わっていないように思います。

見えない相手の姿を想像させる音という情報。
姿が見える普段なら聞き流してしまうかもしれませんが、今回はかなり重要な要素のように思いました。

アニメというと絵が動くという部分に目がいくことも多いです。
ただ当然ながら音もしっかりと考えて作られています。
新世界より19話はキャラの姿が見えなくても、聞いて姿を想像できたことで、それを再認識した話でした*2 *3 *4

「新世界より」 一 [Blu-ray]
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*1:貴志祐介講談社/「新世界より」製作委員会『新世界より』19話

*2:ちなみに原作では「悪鬼」という単語がセリフの中でも用いられています。普通の人は愧死機構を持つため人に手を出せない、しかしそれを持たない「悪鬼」は一方的に人を殺せます。その「悪鬼」という単語が恐ろしさを煽るために効果的に使われていた印象です。19話の登場人物たちはその「悪鬼」という単語を頑なに使おうとしません。それが「わからないモノ」に対する視聴者の恐怖を煽り、「あいつ」の正体を知りたいと思わせるのかもしれないとも思いました。

*3:この記事では音に注目してますけど、19話はあの足音あたりを中心に、絵や動きでも恐怖や焦り、絶望といった感情が伝わって来ました。18話の鏑木肆星の呪力の表現もこことは違った凄みがあったなぁと思います

*4:余談ですが19話の早季を演じている種田梨沙さんの声が所々モノローグの遠藤綾さんの声と聞き分けが出来ませんでした。12歳編と14歳編で男キャラの声優が全員女性から男性に変わった時も、完全にキャラが受け継がれていたように思います。なんというか、声優さんすごいなぁと思います