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ライトノベルの定義とボカロ小説。あるいはケータイ小説とライトノベルの文化圏

先日参加したラノベのすゝめ講演会で心に残っている一幕がありました。
ラノベのすゝめ講演会 - 藤四郎のひつまぶし

それはQ&Aコーナーで質問に答える形で講演者、ライトノベル作家の白鳥先生が言ったライトノベルの定義。
ライトノベルはマンガやゲームなどを小説の形にしたものだと思っている、といった意味合いのことを話されたと記憶しています。

そこからふと思ったのですが、ボカロ小説と呼ばれるものはライトノベルなのでしょうか。

出版点数がライトノベルとくらべてそこまで出ていない、まだ歴史が浅い、なんてことがあるのかもしれませんが、とりあえず身近なところでボカロ小説をライトノベルとして扱っている印象をあまり受けていません。

それに対して、ネット小説などと呼ばれる小説の一部はライトノベルに含まれて扱われたり、語られていたりする印象があります。

以前、ケータイ小説と呼ばれる小説がブームになったことがありました。

現在だとモバゲーのDeNA70%、ドコモ30%の出資比率で運営されているE★エブリスタからヒットする小説が生まれていたりします。
私が知っているところだと王様ゲーム

この王様ゲームも恐らくライトノベルとは言わないかと思います。
ケータイ小説、あるいはネット小説と呼ぶ人が多いのではないでしょうか。

ある文化圏の中での小説ジャンルの形成

私には、これらの小説のジャンルと、それらの小説を需要する文化圏は切っても切れない関係があるように感じます。

あるジャンルが形成されていくにあたっては、ある作品が人気になり、ファン(読者)がついた後に
展開A.その作品を模倣・発展・変化させた作品を作る(作家・編集者)
展開B.その作品のファンに向けた作品を作る(作家・編集者)
展開C.他のジャンルの共通点を持つ作品がファンの間に広まる(ファン)

といった展開が幾重にも重なり、文化圏が形成され、あるジャンルとして世間に知られていくのではないでしょうか。*1
マンガやゲームを好んでいた層に読まれた小説、向けた小説はライトノベルボーカロイドの楽曲を楽しんでいた層に向けた小説はボカロ小説、ケータイをよく使っていた層が日記やメールの延長で読みだした小説はケータイ小説といったジャンルとして。

あるいはミステリー小説やSF小説などもこのような理解の仕方もできるかなー、などと思います。

ライトノベルとボカロ小説、ケータイ小説の文化圏

私はライトノベルを中心に読んでいて、ボカロ小説、ケータイ小説といったものにはあまり触れていません。
ただ少ない作品数ではありますが、読んでみてこれらの文化圏はわりと違うもののようにも思いました。

例えばライトノベルでは登場人物たちが生殖行動に至るケースを見かけることはあまりなく、にも関わらず女の子のキャラが扇情的な行動をとったりすることも多いです。
最近アニメ化された作品だと僕は友達が少ない(NEXT)あたりはそんな印象があります。

それに対してケータイ小説は、わりとさらりと生殖行動に至るケースを見受けます。
先日から読み始めた王様ゲームも物語序盤でそのような表現を見かけました。
[無料電子書籍]王様ゲーム - 小説
それも十分に性欲を高める展開、表現をしてから生殖行動に至るのではなく、日常の行動とまではいかずとも、特别とは言いがたいぐらいのノリで生殖行動を行っていました。

またケータイ小説はその名の通り、携帯で読むことに最適化されている印象を受けます。
誰かが携帯に書いた日記を読んでいるような、メールを読んでいるような、そんな作者や作品との『近さ』を感じました。

生殖行動の敷居の低いコミュニティを身近に感じる文化と、処女性を大事にする文化にはわりと距離を感じます。


ボカロ小説についてはカゲロウデイズを読んだのですが、やや物語への乗り切れなさを感じました。

そこでちょっと調べてみたところ、この小説は楽曲の世界観を解説する意味合いが強いように感じました。

メカクシ団作戦本部 |「カゲロウデイズ」じん(自然の敵P)メディア展開プロジェクト

他の幾つかのボカロ小説も調べてみたのですが、ボカロ小説はニコニコ動画などに投稿された楽曲の世界観を楽しむ、設定を知るためのファンアイテムの意味合いも強いように思います。
悪ノ娘 ノベルシリーズ オフィシャルサイト
終焉ノ栞プロジェクト

アニメやコミックのノベライズに似た性質といえるでしょうか。

ただ「音楽」からのメディア展開というのはライトノベルを好む層からすると割と異質なものと捉えられそうな気はします。
というか私がそう感じたのですが。
同時にケータイ小説ほどの文化の違いも無いように思いました。

ケータイ小説やボカロ小説と比較して、ネット小説の一部はライトノベルと親和性が高いように見受けます。
例えばソードアートオンラインはMMORPGを題材にしており、まおゆう*2の世界観はドラクエなどの日本製RPGとの類似点を感じます。
ライトノベルでは例えば名作の一つといってもいいであろうロードス島戦記テーブルトークRPGを小説化したものという側面を持っています。

ライトノベルを好きな層とネット小説を好きな層には、そういったゲーム要素に抵抗がない、あるいは逆に好むという部分で文化の重なる部分があるように思うのです。

文化圏の発展

これらの文化圏の発展には、ビジネスのしやすさもある程度関わってくるのではないかと思っています。

ライトノベルについてはコミカライズ、アニメ化、ゲーム化といった展開の他、キャラクターグッズなども作れます。
そしてかなりのお金を使ってくれるファンがいることもわかっています。
全巻揃えるのに何万円もかかるDVD、BDを買う人もいますし、何千円するフィギュアを買う人もいます。

そういう稼げる土壌があったからこそ、現在不況と言われる出版業界でも堅調に推移し、新たな作品が次々に提供されているのではないでしょうか。

ケータイ小説のビジネス的展開については書籍化とドラマ化、映画化あたりになってくるのでしょうか。
恋空などのブームがやや落ち着いた理由の一つに、キャラクターでのビジネスがしにくく、展開の種類が限られているのもあるかもしれません。
ただケータイ小説ライトノベルよりも多くの人に受け入れられる可能性もあるので、一概にライトノベルより難しいビジネスだとも思いませんが。
30歳以上は関係ねぇ!? 「恋空」が大ヒットしたワケ : J-CASTモノウォッチ
3億突破 ファン感謝 先着限定入場者プレゼントのお知らせ -劇場版「とある魔術の禁書目録-エンデュミオンの奇蹟-」 公式サイト【アスキー・メディアワークス創立20周年記念作品】-

ボカロ小説についてはライトノベルと同じくコミカライズ、キャラクターグッズを作りやすい気はします。
また舞台化といったライトノベルではあまり聞かない展開もあるようです。
ASCII.jp:「千本桜」の実写ミュージカルが封切り! 公開リハレポ
ニコニコ動画などのみんなで一緒に盛り上がる空気と舞台、ライブなどは相性がいいと思いますので、これからもボーカロイドを中心としたコミュニティ発のプロジェクトの一つとして、ボカロ小説という文化は発展してくるのかな、などと思っています。

諸注意とお願い

まぁうつらうつら考えてみたんですが、自分の周りでケータイ小説やボカロ小説についてガンガン書いている人を見かけないのと、自分がそれらの作品に触れる動線を持っていないので割とトンチンカンなこと言ってるかもしれません。
この辺の文化について書いてある記事なり本なりあったりするんでしょうか。
ぜひとも知りたいですね。

2013/3/16 3:00追記:いくつか興味深い記事を紹介していただけてありがたいです。

ボカロ小説はライトノベルか? - ウィンドバード::Recreation
こちらではライトノベルの定義のずれからライトノベルコミュニティと他のコミュニティ同士の諍いが起きたり、外部からの攻撃を受けてライトノベルコミュニティが疲弊したりするのではないかといった視点がとても興味深いです。
実際そうやってあるジャンルが衰退していったりというのがあるんですかね。

ライトノベルの定義を「コミュニティ」に求めてみる説 - ウィンドバード::Recreation

それをライトノベルの定義に流用してみたい。すなわち、ライトノベルを定義付けるのは、内容でも外見でもなく、それを取り巻くコミュニティである、と。

…モロかぶりですね。

ただし、「コミュニティ」とは「読者のコミュニティ」だけではない。ニコニコのコミュニティだって「投稿者と視聴者と運営」によって作り上げられているわけで、ライトノベルのコミュニティも「作者と読者と出版社」によって作り上げられるものだと考えるべきだ。

…モロかぶりですね。

2012-12-04

あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ。

ふぅ。
やはり書く前か投稿する前にそれっぽいワードで検索するべきですね。

*1:AやBはわかりやすいと思うのでCについて、西尾維新先生を具体例に補足したいと思います。現在では化物語などをライトノベルとみなしている人も少なくないと思いますが、西尾維新先生は『「ミステリの賞」と見なされることの多かった講談社メフィスト賞を受賞した『クビキリサイクル』(講談社ノベルス)でデビューしてい』ます。そして最初はミステリーとして受容されていた作品が、いつの間にかライトノベルとして需要されていったようです。 アジアミステリリーグ - 西尾維新のミステリとしての受容、ライトノベルとしての受容 このような形は他のジャンルだったものがファン主体である文化圏に取り込まれていったように私には見えます。

*2:ライトノベルというジャンルに含むかは微妙なところですが