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藤四郎のひつまぶし

プロの素人によるブログ

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細田直人監督作品のイメージとはたらく魔王さま!


私はスタッフやアニメスタジオ、製作委員会などがアニメの仕上がりに与える影響というのを割と小さく見積もっていました。
特に原作付きアニメについてはそれが顕著でした。
その考えを大きく変えるきっかけになったのが「みなみけ」と「みなみけ〜おかわり〜」でした。

2007年10月から12月にかけてみなみけの初のテレビアニメ化がされ、間を空けずに2008年1月から3月まで2期が放送されるという、通常であれば2クールアニメになりそうな状況。
それなのにタイトルが代わり、1期2期と分けられているのはアニメスタジオやスタッフが違うからでした。


どっちの会社がよい、どっちのスタッフが楽しみだとか前評判は私の耳にも入ってきました。
ですが私としては同じマンガを原作としたアニメが、目に見えて変わるわけがないだろうと思っていたものです。
そしていざ放送されたものを見て、こんなにも違うものなのかと衝撃を受けました。
そのみなみけ1期と2期のうち、2期の監督を務めたのが細田直人監督でした。

時が過ぎ、現在ではある程度アニメスタジオであったり、著名な監督、脚本家、演出家さんたちを断片的に知るようになりました。
作品の色が企画によって決まるのか、監督によって決まるのか、脚本家、各話の演出家によって決まるのか、未だに自分には判断がつきません。
ですが因果関係ではなく、相関関係として、手がけた作品に幾つかの共通点を感じる方がいないわけでもありません。
その1人が細田直人監督です。

細田直人監督が手がけた作品として、みなみけおかわりの他に、SHUFFLE!未来日記などがあります。

私はSHUFFLE!みなみけ未来日記もアニメより先に原作を体験しています。
その経験を元に言えば、細田直人さんはキャラの内面を突き詰めていく作品に携わることが多いのかな、と思うのです。

未来日記については原作のキャラたちの常軌を逸した部分のある行動理念、欲望がこれでもかと言わんばかりに映像に落とし込まれていたイメージがあります。
SHUFFLE!みなみけおかわりについてはあの明るい原作がなぜここまで重くなるのかと思ったものです。
特にSHUFFLE!については原作ゲームでは特にほかのヒロインと敵対することもなく、のほほんと一緒に過ごしていたイメージの楓が、終盤かなり精神的にキツイ状況に追い込まれているのがとても印象的でした。
原作ゲームでは割とあっさり流していた主人公土見稟と楓の間にあった過去をしっかりと掘り下げてのあの展開は、個人的にも世間的にも割と阿鼻叫喚だったかと思います*1

さて、はたらく魔王さま!のお話です。

アニメが始まるまで、電撃文庫の小説が原作であること、観測範囲の伊藤かな恵さんファンの言動から出演者の中に伊藤かな恵さんがいるであろうこと、それとタイトルぐらいしか知りませんでした。
しかしそこはタイトルの力。イラストと並んで本を手にとってもらえるかどうかに大きく影響をあたえるものの力。
きっとコメディ中心のお話だと思って放送時間にテレビの前に座っていました。

そしたらまおゆう2クール目かと見紛うような、ファンタジーバリバリで硬派な雰囲気のアニメが始まるわけです。
かなり面食らいました。
へっ? と思っている私の目に入ってきたのが「監督 細田直人」の文字です。その文字にはなんだか私を納得させてしまう力がありました。

異世界、エンテ・イスラでの戦いがひとまず終わりを告げ、現代日本に舞台が移ってのAパートは素晴らしいコメディでした。
戦乱のエンテ・イスラの緊張感をそのまま纏う魔王サタンたちと、平和な日本ののほほんとした空気の組み合わせが絶妙です。
魔王の緊張感が持続していたAパートとBパート冒頭の魔王の適応ぶりのギャップも面白かったです。
同時に水は低きに流れる、人は堕落する、いった言葉も連想させます*2
そうして日常に慣れてきたと思ったところで、エンテ・イスラの緊張感を纏った勇者エミリアが登場するところも徹底しているなぁと思うのでした。

このエミリアの魔王の前での目つきの悪さは、ヒロインとも、勇者とも思えないようなものです。
そのエミリアも日常生活では世俗に馴染んでしまっているというおかしみがありました。

果たしてこの雰囲気は原作をそのままトレースしたものなのか?
私は気になって原作1巻を購入してみました。

読んでみるとアニメに対して原作は思っていたよりさらりと読み進められるように感じました。

ストーリーについてはあまり手が入っているとは感じませんでしたが、エンテ・イスラと現代日本のギャップ、魔王たちが庶民生活を送る可笑しみは、アニメが原作からしっかりと汲み上げ、増幅させたもののように思います。
そしてそれはそれまで細田直人監督の手がけてきた作品に感じてきたキャラの内面の掘り下げと似たような思想が根底にあるのかなとも思います。

SHUFFLE!みなみけおかわりといったコメディが中心であった原作は、アニメ化でコメディでない方向の掘り下げがあって賛否がわかれた印象がありました。
それに対してはたらく魔王さま!はまだ2話の時点ですが、とくに見る人を選ばないコメディでありながらも、そのコメディの根底にはキャラや世界観の掘り下げがあるように感じます。
わざわざエンテ・イスラ語まで作っているようですし。

企画にあう人材として細田直人監督に白羽の矢が立つのか、細田直人監督が手がけるとその持ち味としてこういったものが出てくるのか、はたまた私が勝手に共通点を作り上げているのか、いろいろと考え方はあるのですが、何はともあれ、今期はこのはたらく魔王さま!を楽しんで見ていられそうです。

※ちなみに2話時点では財布を落としたために魔王の家に泊めてもらうという苦渋の決断を下した勇者エミリアの表情が個人的にぐっと来ます。
全然シチュエーションも、ヒロインの持つ感情も違いますが、未来日記由乃の1話ラストの表情ぐらい感情が顔に出ているように感じました。

和ヶ原聡司/アスキー・メディアワークス/HM Project『はたらく魔王さま!』2話
すえのサカエ・角川書店/12人の日記所有者たち『未来日記』1話

*1:嫌いじゃない、というかあのような踏み込み方はとても好きですが

*2:魔王は人じゃありませんが