藤四郎のひつまぶし

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メディアミックスの一歩先にある作品、革命機ヴァルヴレイヴ


革命機ヴァルヴレイヴの第一話を見ました。
一番最初に出た感想が「これ、装甲悪鬼村正じゃね?」でした。

Chaos エクストラパック 装甲悪鬼村正 BOX

装甲悪鬼村正は劔冑(つるぎ)と呼ばれる、魂の宿る武装付きの甲冑を身にまとい、血みどろの空中戦を繰り広げるニトロプラスから発売された成人向けゲームです。

ヴァルヴレイヴにその面影を感じた要素としてまず挙げられるのは、腰に差した二振りの刀、どことなく戦国時代の甲冑を思わせる装甲といった部分。
事実作中でも群衆の中からサムライ、なんて声も聞こえました。
鎌という禍々しい武器とどこか昆虫類を思わせる翼(?)のダークな感じ、生物的ニュアンスも村正っぽさに通じます。
さらに操縦者を人間で失くしてしまうところも、人とは思えない強靭な再生能力を付加する劔冑の特性を連想しました。

とまぁこれは私がメカニックデザインに入っている石渡マコトさんが村正のメカデザインを手がけていると知っていて、それに引っ張られている部分もあると思うのですが。

その他にもショッキングな展開が続くことにシリーズ構成の大河内一楼さん繋がりでコードギアスを連想する人がいたり、松尾衡監督からレッドガーデン(!)を想像する人もいたりするみたいです。

革命機ヴァルヴレイヴはなかなか面白いスタッフによって作られています。
私がお名前を知っているところで、副シリーズ構成には電撃文庫ソードアート・オンラインアクセル・ワールド俺の妹がこんなに可愛いわけがないなどを担当してきた三木一馬さんとGファンタジー黒執事などを担当してきた編集者、熊剛さんが入っています。
キャラクターデザイン原案は現在ジャンプ・スクエアでD.Gray-manを連載している星野桂先生、SF考証には西洋魔術のエキスパートのイメージが強く、レンタルマギカの魔術考証も行なっていた三輪清宗さんが担当しています。
もしかしたら私がお名前とお仕事をリンクさせられないだけで、他にもあまりアニメでその役職では見かけないが有名な方がいらっしゃるかもしれません。

このスタッフを見ると、製作委員会方式やメディアミックスというものがさらに一歩先に進んでいるのかな、という印象が強まってきます。

リスクを分散することでリスクある作品を作れる製作委員会方式のメリット

現在多くのアニメ作品でとられている製作委員会方式
宇宙戦艦ヤマト2199製作委員会」といったそのままの名前がついていたり、「ゆゆ式情報処理部」「やはりこの製作委員会はまちがっている。」など作品にちなんだ名前がついていたりする、OPやEDで見かけるアレです。

製作委員会とは「映画やゲーム、アニメなどを製作(出資)するために構成された複数の企業による委員会のことである。法律的には民法上の組合(任意組合)に相当する」*1ものです。
ビデオメーカー、レコード会社、出版社、テレビ局、広告代理店、アニメスタジオなどの会社が出資・参加し、作品に関する権利を合有することになります。

この製作委員会方式のメリットの一つに、複数の会社が出資することで一社あたりの金額を少額にし、リスクを下げられることがあります。
話を単純にするために、ビデオメーカーがアニメスタジオに作品を発注し、テレビ局にスポンサー費用を支払って枠を抑え、放送したのちBD・DVDの売上で利益をあげるといったモデルを考えます。

一つの作品を作り放送し、販売するにあたり、アニメスタジオへの支払い(≒TVアニメ製作額)、テレビ局の枠の費用などは販売に先駆けて費用がかかるため、作品がヒットしてもしなくとも変わりません。
BD・DVDなどの製造費用はヒットすればするほど多く製造する必要があり、増大します。
TVアニメ製作額は1話1000万〜1600万円、テレビ局の枠代が全国ネットのプライムタイムなどが1ヶ月8500万程度、TOKYOMXなどのU局系と呼ばれる局の深夜番組で1ヶ月150万円ほどのようです。*2
それに対してBD・DVDのプレス費用は個人でも頼めそうなところを見る限り、1枚500円以下、1万枚以上プレスしても1000万に届くか届かないところに留まりそうに見えます*3

つまり作品がヒットするしないに関わらず、アニメを作ろうとした時に必ずかかる固定費の割合が高く、ヒット具合によって変わってくる変動費の割合が低いことになります。
ヒットしなければかなりの固定費が無駄になる、つまり損失も大きくなるわけです。

そういった状況で、自分が100%の出資をする場合どうなるでしょうか?
いくつかヒットが出ていても、連続で損失を出せば資金が回収できず、会社が傾くことになります。
どんな企業であっても、事業の継続というのは重要な要素です。
もともとの会社がどれだけ体力があるかにもよりますが、会社を潰さないためにも売上が見込める作品、既に売れている作品に似たものを出そうというリスクをとらない作品作りがされると想像できます。

それに対して例えば他にも4社に出資してもらい、20%の出資にすればどうなるでしょう。
ヒット一作品出て手に入る利益は減りますが、その分損失も限定されます。
1つの作品を必ず当てるのではなく、5つの作品全体でしっかり利益を出せればよいという状況ならば、一つ一つの作品でリスクをとる決断もしやすいはずです。
また一社あたりに必要な資金が少なくなれば、小さい会社の参入もしやすくなります。
今日見きれないほどの、多種多様のアニメが供給されているのにはそのような背景もあります。

製作委員会方式、メディアミックス参加企業の持つチャンネルと新たな顧客

製作委員会方式の他のメリットとして、参加している会社の強みを生かせることが挙げられます。
レコード会社が参加していればアニメと連動したCDのリリース、企画などがしやすくなるでしょうし、出版社が参加していればコミカライズ、ノベライズといった企画をスムーズにすすめられることでしょう。

例えば魔法少女まどか☆マギカは製作委員会に芳文社が入っており、本編、外伝あわせていくつものコミックスが発売されました。
けいおん!ポニーキャニオンから多くのシングル、サウンドトラックが発売されました。
ソードアート・オンラインバンダイナムコゲームスでゲーム化がされ、かなりの売上をあげたようです。
成功すればするほど参加各社が利益をあげられる製作委員会という仕組みは、音楽や出版部門などを持っていない会社がレコード会社や出版社と一丸になってそれぞれの強みを生かした展開もできる仕組みとも言えます。

またアニメ化作品に限りませんが、コミカライズ、ノベライズといったメディアミックスで権利関係、資本関係のなさそうな他社と協力して企画を進める案件が散見されます。
例えばライトノベルでシェア一位を占めている電撃文庫の看板作品の一つ、とある魔術の禁書目録シリーズは本編のコミカライズを少年ガンガンで行い、外伝のとある科学の超電磁砲コミック電撃大王で連載しています。同じく電撃文庫魔法科高校の劣等生も、本編がGファンタジー、外伝がコミック電撃大王で連載されています。

メディアミックスはアニメや小説から入った顧客にコミック雑誌も読んでもらったり、逆にコミック雑誌から原作アニメ、小説などに興味を持ってもらう導線にもなります。
基本的にアニメを見ている人がそれまで買ったことがないような雑誌に手を出すこともあるでしょう。
それとは逆にマンガの読者で小説に興味のなかった人が、原作小説を手に取ることだってあるでしょう。

メディアミックスの効果を最大にするためには、権利の有無や資本関係にこだわり過ぎず、会社ごとの強みも考えて、その作品を多くの人に楽しんでもらうメディアミックスが大切になります。
少年漫画的熱さを持つとある魔術の禁書目録がややディープな電撃大王ではなく、少年ガンガンで連載され、クールでかっこいい主人公の魔法科高校の劣等生が女性読者も多いであろうGファンタジーで連載されていることにはそのような事情もあるのではないでしょうか。

製作委員会方式によって、ある作品を中心として、アニメやライトノベル、マンガ、音楽にゲームなどの業界が繋がる形は増えて来ました。
そして資金関係にこだわらず、提供したい顧客がいる媒体に向けたメディアミックスも増えています。
そういった流れの先にヴァルヴレイヴのスタッフ陣があるような気がします。

作品のメディアミックスから各メディアの視点を取り入れた作品へ

メディアミックスをするにあたり、アニメ放送と小説やマンガの発売日を合わせるなどと各社の足並みを揃えた展開を見ることも増えています。
熱心な原作ファンから派生作品が原作へのリスペクトを求められるシーンもなかなか多いです。
それに対応するために、企画者や制作陣の間ではますます綿密な打ち合わせがされていると思います。

そういった交流の中で、作品だけではなく、人脈や前例、実績といったものも生まれます。
それがヴァルヴレイヴのスタッフにも現れているのではないでしょうか。

副シリーズ構成の三木一馬さんはサンライズが手がけたアクセル・ワールドのアニメ化に、原作担当ということもあってかプロデューサーとして関わっています。
また三木一馬さんと熊剛さんはGファンタジーで連載されている魔法科高校の劣等生のコミカライズに、原作担当とコミカライズ先の担当という形で関係しています。

ニトロプラスの石渡マコトさんはニトロプラスががっつり関わったアニメ、ブラスレイターあたりからメカニックデザインでアニメに関わることが増え始めます。
同じくニトロプラスのライターである虚淵玄さんがアニメに深く関わることが増えてきたあたりから、石渡さんもアニメに関係するお仕事が増えてきたイメージがあります。
今回のメカニックデザインのコンペに参加されたのも、そんな流れがあったからではないでしょうか。
「革命機ヴァルヴレイヴ」 プロデューサーが語る作品誕生・企画の秘密 池谷浩臣(サンライズ)×丸山博雄(MBS)(1/2) | アニメ!アニメ! はてなブックマーク - 「革命機ヴァルヴレイヴ」 プロデューサーが語る作品誕生・企画の秘密 池谷浩臣(サンライズ)×丸山博雄(MBS)(1/2) | アニメ!アニメ!

こういったメンバーが揃ったのは、ヴァルヴレイヴのメディア展開を見る限り、ノベライズ、コミカライズ、ゲーム化などが先行してのものではないように見えます。
先ほどの記事の丸山プロデューサーの言葉からも、多くの人に楽しんでもらえるように、多様な作品、多様なメディアを代表する人から意見やアイディアを取り入れているように見受けます。

「革命機ヴァルヴレイヴ」 プロデューサーが語る作品誕生・企画の秘密 池谷浩臣(サンライズ)×丸山博雄(MBS)(1/2) | アニメ!アニメ! はてなブックマーク - 「革命機ヴァルヴレイヴ」 プロデューサーが語る作品誕生・企画の秘密 池谷浩臣(サンライズ)×丸山博雄(MBS)(1/2) | アニメ!アニメ!

―― 丸山
これは本当に難しいことだとは思いますが、個人的には今回のメカが、老若男女、人を選ばず好きになってもらえたらいいなと願っています。
自分たちのようにメカ好きの人々にはもちろんのこと、普段ロボットアニメをあまりご覧にならない方にも興味を持ってもらえて、ロボットアニメを好きになってもらうきっかけに少しでもなれれば幸せです。

今作は、色々な世代の、そして違った経歴で育ったクリエイターさんやスタッフが意見や好みを出し合いながら作っています。それらが混じりあってできたものが、見てくれる方々にどのように受け止められていくのか、もちろん不安もありつつ、楽しみにしています。

製作委員会という作品を作るための資本や権利関係の繋がりが、あるコンテンツを違う媒体で、より多くの人に楽しんでもらうための繋がりへとシフトしていく。
そこから生まれた交流が、より多くの人に楽しんでもらえる作品を作るために活かされる、といった流れの中に、革命機ヴァルヴレイヴという作品があるように思うのです。

まぁ業界内部のことなので想像でしかないんですけど。
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