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藤四郎のひつまぶし

プロの素人によるブログ

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お行儀の良い作品より、心を打ち抜く作品を目指していると再確認したのうりん6巻

ライトノベル のうりん 思想 ストーリー 感想 紹介


のうりんという作品は農業高校を舞台とする、綿密な取材に基づいたライトノベルです。
その取材の成果は作品の端々から感じられますし、作者のブログでも取材の一部が見られます。

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そしてのうりんという作品は、パロディやお色気、下ネタについてもかなりギリギリまで攻めているライトノベルでもあります。

白鳥士郎のうりん 2 』(GA文庫)P144

 確かに、ごくわずかな例外的な場合を除き、妊娠していない雌の乳から母乳が出ることはあり得ない。
 しかし同時に、妊娠していない雌のおっぱいがあそこまで肥大することもまた、生理学的に見て異常な事態なのである。
 普通に子供が手で搾ったくらいでは何も出ないだろう。
 だが……器具を使えば?
 そんな知的な好奇心が、ぼくらを冒険に駆り立てた。イカロスのように……。
「農……林檎……」
「「ん?」」
「GO!」
 ヴィィィイイイイイイイイン……
「ぼにゅぅぅぅぅぅぅぅぅ〜〜〜〜〜〜んンン!でりゅのおおぉぉぉぉぅこちょうのミルクびゅーってでちゃうにょぉぉ朝からずっしり♡ミルクポット2リットルじぇんぶ搾り取られヒャうゥ母乳母乳母乳お嬢様のぼにゅうどぴゅどぴゅって発射ずりゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっっ!!」

             ※

授業は終わった(あらゆる意味で)。
白鳥士郎のうりん 3 』(GA文庫)P195

のうりん6巻ではこのようなのうりんの極端なあり方が突き詰められているように感じました。

冒頭から炸裂するお色気シーン

5巻ラストは一時アメリカの実家に戻っていたフラットボディの少女ナタリーが、ナイスバディになって戻ってきて、主人公耕作をめぐる恋愛戦線に参戦するところで終わっていました。
6巻冒頭ではその流れをそのまま引き継ぎ、幼なじみの農、耕作の憧れのアイドルだった林檎、そしてナタリーの三人でラブバトルが繰り広げられます。
飛び級で大学を卒業しながらもまだ10歳前後という天才児ナタリーが、常識については歳相応でからっきし、しかしボディの発育はぶっちぎりという設定をいいことに、ムフフなことをしまくりです。
それに対抗するために農と林檎の言動もエロストレートエスカレート。
もともと結婚や子作りというものに積極的な農がいることもあって、すごいことになっています。

他にも電器屋でロデオマシーンを見つけた時になぜか巨乳キャラがなぜか大集合していたり、「交尾」と言葉に出して迫る美少女が出てきたり…なんかもうその…欲望に忠実ですね。

極まったフェチへの探求描写

6巻で印象に残った展開の一つが主人公耕作の足裏フェチへの極まりっぷりです。
以前から足の裏に異様な執着を見せていた耕作でしたが、「生地を足で踏む」作業のある手打ちうどん作りは食欲以外の欲望も満たすものでした。
その描写は「こいつホントに主人公なのか…?」「こいつに感情移入して読める人いるの…?」などの呆れ衝撃をもたらすものでした。

これでもかというパロディの数々

毎度のことですがのうりんのパロディは量も質も凄まじいです。
印象に残るところでは

"リョーコ先生"という
!?
"特攻の拓"を体現したかのような先生が出てきます。

このリョーコ先生が出てくるエピソードである4章、P92-P127の30P以上がほぼ特攻の拓祭りとなっています。
元ネタに備わっていた迫力もあいまって、挿絵のインパクトはかなりのものです。

白鳥士郎のうりん 6』 (GA文庫)P94

6巻のラストにかけては食料の需給の話、食料安全保障、TPP、日本の農業の未来といった重いテーマが切実に描かれています。
しかしその重い空気にあわせてばかりでもありません。
小さい隙を見つけては数々のパロディが挟まれてきます。

しっかりした取材と知識に基づく表現

かなりぶっ飛んだセクシー表現やギャグについても、あわせて科学的、学問的、経済的論理付けなどが挟まれるのがのうりんの魅力です。
うどんの足踏みであっても、機械より味が良いとされる理論を解説していたり、そこから小麦の生産地の話につなげたりと一つの題材にギャグと勢いと知識と冷静さが混在していたりします。

ラストにかけての重いテーマについても、説得力のある話を意外性を交えて「読ませ」ます。
農業に関係する描写には、ギャグやお色気のおまけなどとは言えない凄みがあります。

深刻なテーマと高校生という大人過ぎず子供過ぎないキャラが出す答え

これまでものうりんでは農業を通じて自然や動物と人間がどう付き合っていくか、農業、農村はどうあるべきか、というテーマに何度か触れてきました。
6巻では日本の農業の姿を世界の農業と比較し、そこにTPPと食料安全保障、経済合理性、日本の農業従事者の高齢化などを絡ませて、どうあるべきかを考える場面があります。
そこで見えてくる日本の農業の現状は厳しいとしか言いようがないものです。

このテーマの大きさと深刻さに対して、主人公の耕作は身内が庶民向けの農業をし、自分もそれを志向して農業を学ぶ特别な力も持たない一般人です。
問題を一刀両断するようなアイディアも、状況をひっくり返すような力もありません。
その耕作に対して、6巻では一つの選択が迫られることになります。

そこで耕作が出した答えは、甘さとわがままを残しつつ、ひたむきで力強いものでした。
高校生という大人と子供の中間のキャラが出す答えの一つのあり方として、とても真摯で心に響いてくるものがあります。

お行儀の良さより、心を打ち抜くことを目指した作品

6巻を読んで、のうりんは「ライトノベル」であり、全方面に妥協しない作品なんだな、という認識を新たにしました。

この取材量ならば、もっと農業とそれを取り巻く環境にフォーカスし、お色気やパロディ、ギャグを抑えて、行儀が良い、学校の先生が生徒たちに農業を学べる本として勧められる作品にすることもできたかと思います。
あるいは取材の手間を省き、議論を呼びそうな農業の暗い話題についてはバッサリカットして、あくまで農業高校はお飾りに留め、お色気と笑いだけの作品にも出来たかと思います。
それでなくとも、各種突き詰められたセクシー描写、パロディ、下ネタをもっと和らげ、農業についても下手につつくと抗議がきたりツッコまれたりする部分をさらりと流すことで、もっとマイルドで差し障りの無い作品にすることも考えられたかと思います。
アニメ化が決定し、テレビという衆目の目を集めるメディアにさらされることになるなら、よりそういった方向を志向しそうなものです。
ですがのうりんはそういう道を選びませんでした。

各種表現は愚直に行けるところまで突き進み、農業というテーマにもしっかり深層まで掘り下げ、しかも簡単に答えを出すことを良しとしない。
もしかしたら振り落とされる人は出てくるかもしれませんが、ある部分が心を撃ち抜けば、他の部分に引っかかりを覚えても読めてしまう、そんな勢いのある作品がのうりんだと思います。
のうりん6巻を読んで、そんなことを再確認したのでした。

ドラマCD のうりん
ドラマCD のうりん