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藤四郎のひつまぶし

プロの素人によるブログ

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電子書籍とソシャゲの広がり方の差はイノベーションの有無?

ライトノベル マンガ ゲーム ビジネス 雑記

電子書籍は一気に普及するのか?

連休は、iPadでゆっくりコミック鑑賞はいかが?? Kindleコミック第1巻 99円セール実施中! | キャリア | マイナビニュース はてなブックマーク - 連休は、iPadでゆっくりコミック鑑賞はいかが?? Kindleコミック第1巻 99円セール実施中! | キャリア | マイナビニュース
GW期間限定でkindleのコミックの一部が99円や半額ポイント還元で売られていました。

GW以前にも、電子書籍で同様のポイント還元、値引きなどのセールは角川のコミックやライトノベル中心の電子書籍を扱うブックウォーカーでも見かけていました。
部屋旅フェア|BOOK☆WALKER はてなブックマーク - 部屋旅フェア|BOOK☆WALKER

ただ電子書籍の本命との評判も高く、実際一気にシェアを拡大しているAmazonがこのようなフェアを行うのは個人的には結構衝撃的でした。
Kindleストアが初登場で40%のシェア――OnDeck電子書籍ストア利用率調査 - ITmedia eBook USER はてなブックマーク - Kindleストアが初登場で40%のシェア――OnDeck電子書籍ストア利用率調査 - ITmedia eBook USER

書店では再販制度のために値引きができないのに対し、電子書籍再販制度の対象外のため、自由に値引きができます。
再販売価格維持 - Wikipedia

適用商品
(中略)
ここでいう著作物とは、著作権法に定めるすべての著作物ではなく、書籍、雑誌、新聞、音楽ソフト(音楽用CD、レコード、音楽用テープ)の6品目とされる。同じ著作物でも映像ソフト(ビデオ、DVD)、コンピュータソフト(「ソフトウェア」と呼ばれるもの)、ゲームソフト[2]は含まれない。また、ダウンロード形式により販売される電子データも含まれない。

こういう値引きの話題性でもって、電子書籍の市場は一気に広がっていくのかなぁと思いました。
そして同時に本当にそうかな?とも思ったのです。

電子書籍と紙の書籍の現状

ということで電子書籍と紙の書籍の現状を調べてみました。

――電子書籍ビジネス調査報告書2012発行―― 2011年度の新プラットフォーム向け電子書籍市場規模は112億円 前年度比363%増 〜電子書籍市場全体は629億円、2016年度に2,000億円規模へ成長と予測〜 | インプレス R&D はてなブックマーク - ――電子書籍ビジネス調査報告書2012発行―― 2011年度の新プラットフォーム向け電子書籍市場規模は112億円 前年度比363%増 〜電子書籍市場全体は629億円、2016年度に2,000億円規模へ成長と予測〜 | インプレス R&D

出版物販売額7年連続減少、書籍は下げ止まり - JAGAT はてなブックマーク - 出版物販売額7年連続減少、書籍は下げ止まり - JAGAT

出版科学研究所の調査発表によると、2011年の書籍・雑誌の推定販売金額は前年比3.8%減の1兆8042億円と、7年連続の減少だった。

確かに電子書籍は拡大基調、それに対して紙の書籍は下り坂です。
ですが市場規模については電子書籍がまだ1000億円に届かない段階、それに対し紙の書籍がまだ2兆円に迫る規模を持っているようです。
その差は10倍以上。

株式会社インプレスR&Dの調査によれば、2016年の段階の電子書籍の市場は2000億程度。
このまま紙の出版がさらに市場規模を落としていったとしても、1兆円を割るまではまだかなりの時間がありそうです。

電子書籍で先行していると聞くことが多いアメリカであっても、電子書籍の市場はそこまで大きくありません。
ニュース - 米国出版業界、2010年の電子書籍売上高は8億7800万ドル:ITpro はてなブックマーク - ニュー
ス - 米国出版業界、2010年の電子書籍売上高は8億7800万ドル:ITpro

 米国出版者協会(AAP)は、出版業界の米調査団体Book Industry Study Groupと共同で実施した米国出版業界に関する調査結果を米国時間2011年8月9日に発表した。それによると、2010年の電子書籍の売上高は8億7800万ドル*1で、消費者向けカテゴリー全体における電子書籍の割合は2008年の0.6%から6.4%に拡大した。電子書籍の販売部数は1億1400万部で、2008年と比べ1039.6%増加した。

 2010年における米国出版業界の総売上高は279億4000万ドル*2で、2009年と比べ3.1%増加し、2008年からは5.6%成長した。販売部数は25億7000万部で2009年と比べ2.4%、2008年と比べ4.1%増加した。

2012年の米国商業出版社純収益で電子書籍の占める割合が22.55%に:米国出版社協会発表 | カレントアウェアネス・ポータル はてなブックマーク - 2012年の米国商業出版社純収益で電子書籍の占める割合が22.55%に:米国出版社協会発表 | カレントアウェアネス・ポータル

そういった意味で、電子書籍はまだしばらくは好事家のものであり続けるのではないでしょうか。

電子書籍と紙の書籍に対するソーシャルゲームと家庭用ゲーム

このまだまだしばらくは肩を並べるには至らない電子書籍と紙の書籍の関係に対して、ソーシャルゲームと家庭用ゲームの関係は随分違っているなとも思いました。
2011年国内ゲーム市場規模は約4543.8億円に――エンターブレインが発表 - ファミ通.com はてなブックマーク - 2011年国内ゲーム市場規模は約4543.8億円に――エンターブレインが発表 - ファミ通.com

2011年のオンラインゲーム市場規模は1405億円、ソーシャルゲーム市場規模は2794億円と判明 - ファミ通.com はてなブックマーク - 2011年のオンラインゲーム市場規模は1405億円、ソーシャルゲーム市場規模は2794億円と判明 - ファミ通.com

ハードとソフトあわせて4543.8億円の2011年家庭用ゲーム機市場に対して、ソーシャルゲームの市場規模は2011年で2794億円。
年が違うので単純にソフトの2746.4億円という市場規模と同等の規模を持っています。
そしてソーシャルゲームは成長スピードの減速はあるものの、さらなる成長も期待されている分野です。
完全に家庭用ゲーム市場と同等の規模にまで成長する可能性も低くないでしょう。
ソーシャルゲーム国内市場規模は2013年度に4256億円へ、YRI調査 -INTERNET Watch はてなブックマーク - ソーシャルゲーム国内市場規模は2013年度に4256億円へ、YRI調査 -INTERNET Watch

ソーシャルゲームと同様のイノベーション電子書籍にあるのか

2000年代終わり頃からグリー、モバゲーといったサービスで爆発的な発展を始めたソーシャルゲームは5年程度で国内の家庭用ゲーム機と肩を並べるところまで成長してきました。
それに対して電子書籍はまだまだ紙の書籍と肩を並べるまで時間がかかりそうです。

この2つを並べてみると、ソーシャルゲームというのはイノベーション、革新的な商品、サービスだったのだなぁと思います。
常に持ち歩く携帯電話で、スキマ時間に無料で始められるゲーム。
ゲームを始める時ではなく、それが面白くなり、早く進めたくなってきたときに時間を買うような形で課金をするというシステム。
こういった特徴がそれまでゲームに触れていなかった層にゲームをさせるという新たな市場を生み出したのだなぁと思います。

任天堂もDSやWiiでゲームに触れていなかった層の取り込みを行いました。
ですがソーシャルゲームの強みは現在多くの人が所持している携帯電話を使うところ、ゲーム機本体やソフトというゲームを始めるまでの初期投資が少ない点でしょうか。
携帯電話はインドなどの新興国でもかなりの普及を見せています。
各国の固定電話と携帯電話の普及率推移をグラフ化してみる(新興国編):Garbagenews.com はてなブックマーク - 各国の固定電話と携帯電話の普及率推移をグラフ化してみる(新興国編):Garbagenews.com
もちろんその携帯すべてがブラウジング機能を備えた高性能な携帯というわけではないでしょうが、ゲーム機と高性能な携帯電話のどちらを買うかの選択では後者が有利な気もします。
洋ゲーと呼ばれるジャンルが日本ではそれほど流行らない、逆にモンハンが海外では日本ほど振るわないなどの文化の違いはありますが、ローカライズに成功すれば世界でも伸びる余地は十分にあるように思います。

そういったソーシャルゲームに対して、電子書籍はそれほど革新的な商品ではないような気もします。
私にはまだ既存の本の代替品といったイメージが強いです。
本棚のスペースを気にせずに買える、本文の検索ができる、本屋に行かなくとも本が買えるといった長所だけでは、一気に紙の書籍を置き換えることは難しいように感じます。

もし電子書籍が一気に普及するとすれば、それは電子書籍に合わせたコンテンツ、サービスが揃ってきたときではないでしょうか。
例えばスキマ時間に読んで満足感を得られるような物語や雑誌の誌面作り。
あるいはネット接続を利用したサービス。
ソーシャルゲームを模倣して、友人に紹介した本が購入されたらキャッシュバックがあったり、読んだ冊数、ページ数のランキングやランキングに応じたプレゼントがあったり、書籍ごとに複数の購入特典があって、それらをコンプリートするとさらに別の購入特典が…ってこれは違法か。
まぁこれは流石にソーシャルゲームそのままですが、新しい楽しみ方、違った楽しみ方が出てくると、爆発的な電子書籍の普及が始まるんじゃないかなー、なんて思います。
そんな未来が来るかどうかわかりませんが。

で、もしそういう展開があるとしたら、その火付け役は既存の出版社や取次、書店じゃなくて新興の会社かもなーなどとも思います。
既存の各社は電子書籍でそんな手間暇かけたチャレンジをするよりも、紙の書籍を既存の書籍の作り方で既存の流通に載せる方が利益を出しやすいはずです。
そういったチャレンジをするとすれば、そういった既存のルートを持たない人、会社になるんじゃないかなーと思います。

ちなみにこの既存の企業は革新的なサービスを生み出せないという考え方はイノベーションのジレンマと呼ばれるもの。
魅力的な商品やビジネスモデルを持つ企業がその商品やビジネスモデルが魅力的であるがゆえに欠点だらけでリスクが大きい新商品、新サービスをあえて開発、販売はしないという考え方です。

ソーシャルゲームがなぜソニー任天堂スクエニバンナムセガサミーコナミといった企業から出て来なかったか、ソーシャルゲームとは言わずとも、家庭用ゲーム機でのDL販売がなぜ低調なのかも、おおまかにはイノベーションのジレンマで説明できる気がします。
2012年10月25日(木)決算説明会 任天堂株式会社 社長 岩田聡 はてなブックマーク - 2012年10月25日(木)決算説明会 任天堂株式会社 社長 岩田聡

まだ、マス宣伝を行っているわけではありませんが、9月末時点では全世界ベースでソフトにより違いはあるものの、パッケージ版とダウンロード版を併売したソフトの販売数の3%強から10%強のレンジでダウンロード版をご購入いただいております。直近では国内市場において、併売ソフトのうち、累計販売本数に占めるダウンロード版の販売数が15%に達しているソフトもありますので、新たな試みとして順調なスタートが切れたと受け止めています。

各社がそれまで築き上げてきた卸、小売までの販売網に対し、ネットという販路は小さく、注力しないのが合理的だったのでしょう。
しかし今やオンラインゲームを含めたゲーム市場ではそのネット経由での売上がかなりの割合を占めているのです。

ソーシャルゲームと家庭用ゲームのような劇的な変化が電子書籍と紙の書籍についても起こるのか、それとも紙の書籍の補完としての電子書籍が徐々に紙の書籍の地位に取って代わるのか、あるいは今後も紙の書籍が中心であり続けるのか。
未だ電子書籍の先行きに不安があるため購入をためらう自分にとっては、どれでもいいので早く方向性が見えてくるとありがたいです。

イノベーションのジレンマ 増補改訂版 (Harvard business school press)
イノベーションのジレンマ 増補改訂版 (Harvard business school press)

*1:太字は筆者強調

*2:太字は筆者強調