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藤四郎のひつまぶし

プロの素人によるブログ

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ツボを押さえた設定と読ませる話運び『機巧少女は傷つかない』


名前は知っていながらもこれまで手にとって読んでなかった『機巧少女は傷つかない』。
アニメ化ということもあり、時間があるGWに読んでみました。
『機巧少女は傷つかない』公式サイト

かなり面白かったです。

異国情緒と親近感

舞台は英国の倫敦から蒸気機関車で半日、20世紀初頭のリヴァプール
魔術が発展し、強力な魔術を使うための自動人形と人形使いが歴史をも左右する世界。
それらの人形遣いを教育するヴァルプルギス王立機巧学院で物語は紡がれます。

まずこのロンドンを倫敦と書くところが良いですね。タイトルの機巧少女と書いてマシンドール。こちらもいい。
なぜ良いかというと主人公の赤羽雷真が日本人で、その相方である自動人形、オートマトンの夜々の服装は和装、着物であるから。

物語は倫敦からリヴァプールに向かう蒸気機関車の車内から始まり、産業革命の始まりの地、イギリスを強く印象付けます。
そこに見慣れた日本人の赤羽雷真と日本を象徴するかのような着物の少女という取り合わせ。

自動人形と魔術によるバトルに加え、物語が進むに連れて貴族階級が垣間見えたりと英国風がしっくりきながらも、雷真周りの会話などから遠い日本の状況がちょくちょく入ってくる。
異国情緒を醸し出しながら、主人公周りの和の雰囲気に親近感も感じられます。

謎を小出しにする読ませるストーリー

登場人物の行動は意表をつくものも多く、なにが目的だ? と思わせることが多いです。
それは主人公のライシンが留学先の王立機巧学院でいきなりトップの十三人の1人に戦いを挑むところからしてもそう。
そういう大小入り混じった数多の「なんで?」が常にストーリーの続きを読ませたいと思わせます。

また主人公雷真と夜々のやりとりは物語当初から既に勝手知ったるといった風。
端々に知らない固有名詞、知らないエピソードが現れては消えます。
他のキャラにも様々な背景を匂わせるセリフがちらほら。
そういったやりとりで登場する幾つかの「なんで?」は各キャラの過去、背景を知りたいと思わせます。

この現在と過去2つのストーリーを上手く絡ませてクライマックスに持っていく話運びがたまりません。
現在のストーリーにあわせてキャラの過去が明らかになり、キャラの過去がわかることで現在の性格が補強され、ぐっとキャラを身近に捉えられるようになる。
この話運びはかなり私好みです。

続きを念頭に置きながら1巻でしっかり読ませる

1巻には収まらない大きな背景をチラリチラリと見せながらも、1巻でまとめるべき魔術喰い、カニバルキャンディのエピソードは過不足なくしっかりまとまっています。

1巻で完全には明かされない過去、背景は、一部がミスリードに使われ、他の一部が物語のスケール感に寄与します。
そういった背景がありながらも1巻内で提示され、消化されるエピソードやギミックも数多く、消化不良感はまったくありませんでした。

ツボを押さえた設定と読ませる話運び、そして物語のスケール的に続刊もかなり楽しめそうな気がしています。

機巧少女は傷つかない〈1〉 Facing "Cannibal Candy" (MF文庫J)
機巧少女は傷つかない〈1〉 Facing