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翠星のガルガンティア前日譚『少年と巨人』と本編から読み取る自然征服思想と自然共存思想


先日、一部アニメ専門店ほかで翠星のガルガンティアの前日譚のノベライズ、『少年と巨人』が発売されました。

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アニメ本編ではガルガンティアの技術、文化についてかなりの時間を割いて描写されてきました。
それに対してレドの所属する(していた?)人類銀河同盟の描写は多くはありません。
『少年と巨人』はそんな人類銀河同盟の技術、文化を補完するのにぴったりでした。

そしてこの『少年と巨人』と本編7話を見ると、人類銀河同盟とガルガンティアの人々の思想の違いがはっきりします。
その違いは自然征服思想と自然共存思想といっていいでしょう。

『少年と巨人』には人類銀河同盟の人類と自然に対する思想を端的に表している部分があります。

「すべての生命をはぐくむ母なる宇宙。その宇宙が生み出した数限りない生命は、実は二種類に分けることができます。一つは隷属型生命。もう一つは開拓型生命です。
(中略)
 隷属型生命とは、その生まれた環境に隷属する不完全な生命である。適応によって変化してゆくが、変化したところで環境に隷属していることは変わらない。
 開拓型生命とは人類である。人類は完成された生命体であり、自身は変化せずに、道具によって環境を征服し、また新たな環境を開拓する。

海法紀光翠星のガルガンティア少年と巨人』(Nitroplus)P51

人類銀河同盟がヒディアーズを殲滅しようとする背景にはこのような人間を特別視し、自然を征服しようとする思想があるようです。

一方ガルガンティアの人々はヒディアーズをクジライカと呼び、神聖視しています。
その殺生は禁忌とされ、その禁忌を破ったレドは2話で海賊たちを殺したときと同等、あるいはそれ以上の冷たい視線と態度にさらされることになります。
作中のチェインバーの言葉通り、共存共栄を願っていると言っていいでしょう。

この2つの思想はアメリカなど西洋の自然観と日本など東洋の自然観と比較すると面白いかもしれません。

例えばアメリカでは進化論を信じる人の割合が少なかったりします。
ダーウィンの進化論、米国人で信じているのは40% 写真4枚 国際ニュース : AFPBB News
その背景の一つにはキリスト教天地創造、神が人を自身に似せて作ったという話の影響があるでしょう。
天地創造では人は明確に獣や家畜とは違う存在として描写されています。

日本では進化論が全国の教科書にも採用されています。
人間も自然の一部であるという考えも比較的受け入れられていると思います。

その背景の一つには西洋ではあまりない地震、山がちな地形のために起こる洪水など、比較的自然の厳しさに触れる機会が多いことが挙げられると思われます。
日本において、人間はそのような厳しい自然に翻弄される存在、自然の一部であるとの考え方が一般的になっていったのでしょう。

また、ヒディアーズガルガンティアの人々の関係から私が連想するのが御霊信仰と呼ばれるものです。
古来日本では天変地異を怨霊の祟りとみなし、その怨霊を鎮魂し、神として祀ることで安寧を図ろうとしてきました。
典型的な例としては、謀り事で九州の大宰府に左遷され、無念の内に没した菅原道真でしょうか。

彼の死後、朝廷内で政敵の病没、天災が相次ぎました。
それに恐れをなした朝廷は、彼の罪を許し、贈位を行い神として祀るようになりました。
現在でも学問の神様として菅原道真を知る人は多いかと思います。

ガルガンティアの人々とヒディアーズの間にも同じような流れがあったのではないでしょうか。
文明が後退した人類にはどうしようもない力をふるうヒディアーズに対して、人類は抵抗・攻撃をするのではなく、神、あるいはそれに近いもの、あるいは神の使いなどとして祀ることにした。
そんな歴史が思い浮かぶのです。

この後の展開は、翠星のガルガンティアが一般的なアニメだとすれば、レドが考え方を改め、ヒディアーズとの共存を目指すことが考えられます。
しかしこの作品には、異なる価値観を妥協なしに描かれる作品に多く関わってきた虚淵玄さんが初期段階から関わっています。

「翠星のガルガンティア」アニメ公式サイト | どうも、石川界人です! | 第1回 はてなブックマーク - 「翠星のガルガンティア」アニメ公式サイト | どうも、石川界人です! | 第1回

みんな仲良くがいいよね、といった単純な話ではなく、もう一歩踏み込んだ話になるのではないでしょうか。
そんな期待をしながら後半も楽しんでいきたいと思います。

空とキミのメッセージ
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