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藤四郎のひつまぶし

プロの素人によるブログ

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言の葉の庭の純度

秒速5センチメートルなどを手がけてきた新海誠監督の最新作、言の葉の庭を見て来ました。

最初にぐっとくるのは、やはり現実よりもリアルではないかと思わせるぐらいの背景や小物一つに至るまでの細やかな描写です。
草木やノートに鉛筆、クツ、そして雨と出てくるものすべてが世の中ってこんな美しいものであふれていたのかと思わせてくれます。
多くのアニメが現実にあるものをいくつか取り出して誇張して映像にしているとすれば、言の葉の庭は現実一つ一つのモノの純度を上げたものを映像にしている、とすら思えます。

この映像の純度が主人公の秋月孝雄の純粋さ、ひたむきさととても良く合っていたように思いました。

この孝雄がほんと自分の好きなものしか見えない奴でした。
具体的には靴作りと雨の日に出会った雪野百香里さんという女性。
この2つしか目に入ってないのがストーリーからもバシバシ伝わってきます。
母親が家出して兄が一人暮らしを始めるという家族でもちょっとゴタゴタがあったり、専門学校に行くためにガンガンアルバイトしてたり、その他にも学校でも様々なことがあったりしそうなのに、それらにはあまり興味無さげ。
ただただ公園で雪野さんと交流を深めながら、自分の靴を作ろうとします。
ホント半端ない集中っぷりでした。

それに対して雪野さんは影のある不思議な女性として最初登場します。
仕事のある時間なのに、フォーマルな格好でアルコール持ち込み禁止の新宿御苑で酒を飲んでいる。
おつまみはチョコレート。ホント謎。
ただ後半になって彼女が抱えているものがわかってくると、働くことに悩んでいる人はあー…ってなるかもしれません。

言の葉の庭はこの2人の心情を代わる代わる描いていきます。
その心情が映像からもしっかり伝わってくるのがとてもいいです。

例えば傘。
孝雄は視界を遮ることのない透明な傘。

Makoto Shinkai/CoMix Wave Films言の葉の庭

それに対し雪野さんは影を映す臙脂色の傘。

Makoto Shinkai/CoMix Wave Films言の葉の庭

他にも2人の精神的距離感と物理的距離感のシンクロや、心の変化と服や部屋の変化など、映像が常に2人の心情に寄り添っており、2人の心情の表現と映像の美しさがお互いを引き立たせ合う相乗効果を発揮していました。
そしてその2つに秦基博さんが歌う「Rain」が入ってくると…もうどうすればいいのか。

作品の方向性はかなり明確なので、一度見てよくわからないということはないと思います。
ですが細やかな背景や小物に加えて、光とその反射、影、そして効果音一つ一つまでとても情報量が多く、何度も見返しても新たな発見のある映画だと思います。
1000円で本編46分とお手軽な値段と時間なので、上映館をチェックして足を運んでみてはいかがでしょうか。
劇場情報 - 言の葉の庭

あ、あと同時上映のだれかのまなざしは言の葉の庭とは違った思い出や記憶、イメージの中の映像のような、柔らかい作品でした。

劇場アニメーション『言の葉の庭』 Blu-ray 【サウンドトラックCD付】
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