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俺妹の物語上の焦点と最終巻での恋愛の終着点の妥当性


一晩たって昨日書いた記事よりもう少し冷静になって考えたことを。
俺妹最終12巻を読んでの遠慮ない感想 - 藤四郎のひつまぶし はてなブックマーク - 俺妹最終12巻を読んでの遠慮ない感想 - 藤四郎のひつまぶし

大きく俺妹の物語上の焦点と恋愛関係の終着点の2つについて。

俺妹の物語上の焦点は桐乃の人生相談、あるいは悩みと言い換えてもいいものをどう解決していくか、という部分に集約されると思う。
俺の妹がこんなに可愛いわけがないは桐乃の人生相談から始まった。
桐乃の世間の常識からはちょっと外れている趣味をその主観に染まっていない京介が肯定し、妹のためになんとかするという話が1巻だと思っている。
その後京介はどんどんその趣味に染められていき、妹に障害が立ふさがれば妹のために、あるいは妹が好きな自分のために行動してきた。
そして最終巻直前の11巻で桐乃が京介に恋愛感情を持っていたことがわかり、12巻でどうするかというのが物語上の焦点だったはず。

構造としては1巻に似た部分がある。
世間の常識としては受け入れられないオタク趣味を、兄妹間の愛と置き換えてあげれば。
そうすると問題のハードル、レベルは1巻より高いが、京介の結論、解決方法としては1巻と同じ、つまり妹のためになんとかするという展開はしっくり来る。
妹のためだけではなく、自分のためという理由が一つ付け加わって動機がパワーアップしていると言ってもいい。

と、このような1巻の延長線上にあるルートもありだったが、11巻では京介はスーパーマンではなくて平凡な人だ、と麻奈実に釘を刺されてもいた。
麻奈実の意見を取り入れて、仕方がないことだと桐乃を説得するという京介の変化(成長と言えるかはよくわからない)を強調する終わり方もアリといえばアリだったかもしれない。

桐乃と麻奈実以外のヒロインも、自分なりの解決方法を考えていたみたいではあった。
ただ描写の積み重ねの足りなさは否定できず、はたしてどこまで説得力があるかは疑問が残る。


恋愛関係、つまり京介が誰とくっつくかはほぼ黒猫と桐乃の二択だったようにも思う。
まず黒猫は8巻で京介と相思相愛の関係だった。
しかし黒猫が桐乃の幸せも達成したいと考えたために、破局。
ここで黒猫は自分と桐乃どちらを選ぶか聞くが、答えを聞き出せないで終わる。

「――桐乃の気持ちを知ってなお、あなたは私を選んでくれるの?」
(中略)
「なんて、ね」
 告げる直前で、無粋な台詞に割り込まれた。
「――冗談よ」
「え?」
「……冗談、と、言ったの。すべて冗談。……だから、答えなくていいわ」

伏見つかさ俺の妹がこんなに可愛いわけがない〈8〉』(電撃文庫)P272-274

その後のエピソードは9巻が短篇集、10巻が京介の一人暮らし、11巻が過去編と1人のヒロインと一気に仲を進展させるようなものでもないように感じた。
むしろ京介が自分の中の気持ちを整理するためのエピソードだったとも思う。特に11巻が。
なので黒猫と桐乃の二択だったのではないか?

一応2巻でこんな描写がある麻奈実には黒猫と桐乃に食い込める可能性はあると言えばあったかも。

 俺は渋々と答えた。俺は麻奈実に対して、恋愛感情的なものはないと思う。強いて言えば妹みたいなもの……ううむ、このたとえは何か違うしイヤだな。ええと他のたとえは……

伏見つかさ俺の妹がこんなに可愛いわけがない〈2〉』(電撃文庫)P95

「たとえば……他の男が田村さんに言い寄っても、おまえは構わないっての?」
「は?そりゃ構うよ。ダメに決まってんだろ。誰だその物好きは。ぶっ飛ばすぞ」

伏見つかさ俺の妹がこんなに可愛いわけがない〈2〉』(電撃文庫)P96

ただ2巻だとまだ時期は2年の夏。
このあと麻奈実は11巻ぐらい、つまり3年の12月まで、京介に対して直接的なアプローチをしているとは言いづらいように思う。
京介が自分の気持ちを整理するときに、麻奈実を恋愛感情に格上げするにはやや厳しいように思う。

あやせについては事あるごとに京介がかわいいと言っていたけど、これは他の発言と違ってあからさまにセクハラ目的だったように感じる。
というか、やはり京介ってひどい男じゃないか?嘘のつきっぷりと束縛っぷりが半端ないように思うのだが。


というわけで、物語の焦点と恋愛関係を整理してくと、桐乃を選ぶのが物語上の焦点にきっちりケリをつけ、なおかつそれが恋愛関係に直結していて、わりと妥当性のある展開だったのかも、というのが個人的な結論になる。

じゃあなんでそれを予定調和の展開と思えないかというと、やはり最後まで京介の本音がわからなかったから。
最終巻を読むまで、自分は京介から桐乃への気持ちは妹としてのものだとばかり思っていた。
この京介の気持を前提条件に加えると、桐乃を選ぶという選択肢がまっさきに消えるため、テーマ的には麻奈実、恋愛的には黒猫となってどんな結末になるか全然予想が出来なかった。

そういう意味で、予定調和で終わらせず、最後まで話題になる話作りとしてはとてもすごいものがあったな、という風にも思う。
俺の妹がこんなに可愛いわけがないは実在企業とのコラボ企画の多さ、ニコニコでの楽曲の公募なども含めて、今を生きた作品とも言えるんじゃないだろうか。