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【ネタバレ】ハルのネタバレあり感想【ネタバレ】


映画『ハル』を見てきたのでその感想を。
劇場中編アニメーション「ハル」 | 人とロボットの奇跡の恋を描く劇場中編アニメーション

大切だったものに後から気づく物語

当たり前のように思っていた生活が、後から大切なものだったと気づく、ということがあります。
一人暮らしするようになってから家族のありがたさに気づいたり、仕事で時間が取れなくなってから学生時代がいかに自由だったか気づいたり。

後から大切なものに気づくという話は、現実だけの話ではありません。
今放送しているアニメだと、革命機ヴァルヴレイヴでも死んでからその大切さに気づくという描写がされていました。

『ハル』という作品も、人間のハルが飛行機事故で死んでしまってから、時に仲良くし、時にケンカしていたくるみとハルの生活がどれだけ大切だったか気づく物語でした。
そしておそらく登場人物だけではなく、観客も作中の登場人物の言動の大切さを後から気づくように設計された作品なのではないでしょうか。

例えば作中でロボットのハルがくるみのためにキリンの置物を持ってこようとするエピソードがあります。
最初なんでハルはそこまでしてキリンを持ってこようとするんだろう? と思ったのですが、あとからくるみがキリンと一緒に写っているアルバムをめくっていたりするのをみて、くるみのキリンの好きさがわかってきたりします。

キリンの置物が0円である意味についても、同様の後から大切さがわかるエピソードのように感じました。
0円なのになんで勝手に持って持っていってダメなのか聞くハルに、ハルの監督者みたいな立場の荒波というドクターが『0円は値段が付けられないって意味もある』という旨の発言をします。
これは何も知らないロボットに人間の考え方を教えるエピソードではあります。
ですが後からわかってくる人間のハルの持っていた価値観との対比にもなってくるエピソードで、後から言葉の重みが増してきます。

『ハル』は、こういった後から大切さがわかるエピソードが随所にあるため、登場人物が過去の生活の大切さに後から気づくのを、観客も追体験するような物語に仕上がっているように感じました。

そしてこの構成はハルが50分の劇場中編アニメーションだからこそできるものかもな、とも思いました。
私には各登場人物の思い入れ具合がわからない内に展開されるエピソードは、やや唐突な印象も否めませんでした。
それでも面白いと感じられたのは、くるみの家の小物や庭の美しさだったり、多彩な表情を見せてくれる京都の町並みの力があってこそだと思います。
ですがこれが90分、120分続けられたらきつかったかもしれません。
あるいはテレビシリーズで15分、30分という区切りでCMや次回に続いたりしていたら、集中力が途切れてちょっと厳しかったかもしれません。
50分という尺だからこそ、この仕組みを貫きつつ、観客に過度な負担をかけないようになっていて、劇場で見るからこそ集中して見られて何気ないエピソードの大切さに気づけるのかなぁと思うところです。

『ハル』の面白さは後半になるにつれてグイグイ上がっていった印象があります。
押入れに隠れてハルと顔を合わせることもしなかったくるみが、その可愛さ、可憐さを見せるようになっていったり、ハルが人間らしい感情を見せたり、これまた最初はとらえどころのないハルの旧友のリュウの話が、最後に大切なものを失わずに済むという、大切な人とちゃんとお別れができたという救いとは違う形の救いのある物語になっていたり。

後から大切さがわかってくる仕組みと相まって、後半、終盤の話の濃密さはかなりのものでした。
そして見終わってからいろいろ考えることで、各キャラ、エピソードの味わいもさらに増す作品のようにも感じます。
満足度はかなり高い作品でした。

なので帰りに寄ったアニメイトで小説版が売り切れててすげー残念でしたよ!
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ハル (WIT NOVEL)
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