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藤四郎のひつまぶし

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本能寺の変後の明智光秀の理解し難さ描写が面白かったセンゴク一統記4巻

マンガ センゴク 紹介 感想


センゴク一統記は今私が一番好きな戦国時代モノのマンガの一つあり、そのマンガで現在描かれているのが私が一番好きな戦国時代のエピソードである本能寺の変であるため、かなり興奮して読んでいます。

本能寺の変に至るまでの道筋を描いた3巻もなかなか興味深かったのですが、信長の最後と明智光秀の構想が描かれる4巻はさらに心が震えるものがあります。

センゴク一統記3巻に人の意志と抗えない力が織りなす「現代的」な本能寺の変を見た - 藤四郎のひつまぶし はてなブックマーク - センゴク一統記3巻に人の意志と抗えない力が織りなす「現代的」な本能寺の変を見た - 藤四郎のひつまぶし

戦国時代を愛し抜いた織田信長

信長はセンゴクシリーズでは欲しいものは全て奪い取る、戦国の世を愛する人物として描かれていました。
ただその愛し方、欲しがり方は尋常なものではありません。
それはセンゴク外伝、桶狭間戦記では桶狭間の戦いにて打ちとった今川義元の首の前での、
「惚れすぎた 故に 殺っちまった」
といったセリフにも表れています。

4巻で明智光秀の謀反を知った時は、明智光秀が自分のこと憎んでたのか気にしたり、森乱丸に光秀はそれだけじゃなくていろいろ考えてのことじゃないかと言われたらちょっと生き生きしだしたりと、最後までどこかガキっぽいというか、自分の欲望に忠実だったように見えました。

戦国の世を愛し、自分の欲望に忠実に生きた信長の死の瞬間は、夢半ばで果てることへの怒りがありながらも、それを含めて下克上を味わい尽くしたとする、負け惜しみなのか達観なのかそれとも満足なのか判別のつかないものとして描かれていました。
最後まで苛烈で面倒な性格がまさに信長といった感じです。

明智光秀の明晰な頭脳と理解し難さ

信長の最後は欲望という「私」中心のものとして描かれていたように見えたのですが、対して信長を殺した光秀は「私」が見えず、「公」の側面が強調されていたように思います。
光秀の口から出てくる言葉は明瞭でありながら、光秀個人は到底理解できないという、一見相反するようなことが見事に描かれていました。

光秀はこの巻で信長亡き後、自分の作る世の中の構想を語ります。
その考えは時代を先取りした革新的なもので、それだけだと戦国時代において、あまりに先進的な考えを持つ人物という評価になりそうです。
ですがその構想を語る前に本能寺の変を知った旧友との会話があり、そこからの流れで見ると光秀は一気に異様な雰囲気を持つ人物となっています。

旧友は光秀がとっくにしていると思っていた敵味方への工作を現在進行形でやってるところをみて、
「もしかして思いつきで信長殺っちゃった後にこれからどうするか考えてるの?(意訳)」
と言ったところ
「うん、殺っちゃった自分もびっくりしてる(意訳)」
と光秀が返し、
「お前この先この国どうすんだよ…(意訳」
と聞かれて構想を語ります。
この間光秀は全部真顔でなんの迷いもなく。
神のような人物である信長を思いつきで殺すというあまりに突発的な行動を起こした上に、その時代の制度とかけ離れたあまりに突拍子もない構想をぶち上げられたら、おかしい人と思われないほうがおかしい。

ただ当の光秀はもう悩みに悩み抜いた末の答えのため、完全に迷いなく物事を進めます。
そしてその構想を実現するために打つ手は京という日本の中心の地盤を固め、周囲の敵はさらに遠方の大名と組むことで抑えるという現実的なもの。
もとから光秀に心酔している家来たちは光秀の手腕の確かさもあり、それについていきます。
この内からではその異様さがわからないけど、外から見れば明らかに異様というギャップが、その後光秀が頼りにしておりながら味方にならなかった大名たちの理由付けとしても効いてきてるのがすごくいいです。

あと光秀が自分の考える世の中の構想を、「天が下なる政」と言うのもグッと来ます。
これは本能寺の変の前に行った連歌会で光秀が詠んだとされる、「時は今 雨が下しる 五月かな」という歌が元になっていると考えてよいでしょう。
この歌は時=土岐が土岐氏を源流とする明智光秀を指し、雨が下=天が下、しる=治るで明智光秀が天下を治めるとも解釈でき、本能寺の変をほのめかす歌として知られています。
この歌ですが「時は今 雨が下なる 五月かな」であったという話もあります。
こちらの場合は明智氏が天下を取るという意味にはならず、光秀が謀反をほのめかしたことにもなりません。
センゴクでの自分の野心というよりは、世の中の秩序を求めて行動していた光秀が「天が下なる」と口にするのにはニヤリとしてしまいます。

この本能寺の変という戦国の一大事の後には、秀吉が恐ろしいスピードで中国地方から戻ってくる中国大返し明智光秀が退場することになる山崎の戦いとまだまだ見どころが目白押しです。
そしてその後は最近めっぽう影が薄くなった主人公、仙石秀久の大失敗と戦国で類まれな挽回劇が控えています。
無印の頃から読んでいてやっとここまで来たのかという感慨と、一番力が入るであろう部分を楽しめる喜びを噛み締めながら、続刊を楽しみにしたいと思います。

センゴク一統記(4) (ヤングマガジンコミックス)
センゴク一統記(4) (ヤングマガジンコミックス)