読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

藤四郎のひつまぶし

プロの素人によるブログ

お気に入り+このサイトの新着記事

ワルキューレロマンツェに匠の技を見る

風車小屋に桜が舞う。
西洋甲冑の下から可愛らしい制服が覗く。
レンガ造りの欧州風の町並み、木造中心の試合場という歴史を感じる舞台で、インカムマイクを装着した女の子が実況をする。


Ricottaワルキューレロマンツェ製作委員会『ワルキューレロマンツェ』1話

1話冒頭からこちらを混乱させるようなシーンの連続だが、OPで原作Ricottaというテロップを見て、1話で道路を走る馬車を暴漢が襲う展開が印象的だった、プリンセスラバー!というアニメ作品を思い出し納得する。

2009 Ricotta/私立秀峰学園社交部『プリンセスラバー!』1話

原作のゲームブランド、Ricottaは高貴な身分や伝統といったものを無添加で日常に放り込んだような世界観が特徴なのかもしれない。
セレブなお嬢様との恋を描くプリンセスラバーに続く二作目のゲーム、ワルキューレロマンツェは、馬上槍試合、ジョストを中心とした騎士と騎士補佐、ベグライターの熱い戦いと恋を描く物語だ。

冒頭だけでは大味な作品にも思えるかもしれないワルキューレロマンツェだが、実際は職人的な技が随所に見られ、2013年10月スタートのアニメの中でもひときわ輝いて見える。
今回はそのワルキューレロマンツェの魅力に迫ってみたい。

かわいい女の子のかっこいい騎士姿への「変身」

かわいい女の子とかっこいいヒーロー。その2つが好きな男は少なくないだろう。
ではその2つが同時に楽しめるとすれば?
それはもう盆と正月が一緒に来たようなものだ。
ワルキューレロマンツェにはかわいい女の子がたくさん登場するが、彼女たちは甲冑を身につけ、フェイスガードを下ろすとかっこいい騎士へと「変身」する。

彼女たちの中から1人クローズアップするなら、純和風の雰囲気をまとう少女、龍造寺茜を取り上げたい。
甲冑に花の意匠をあしらうという、無骨さの中にも華やかさを持つ彼女のジョスト姿は、フェイスガードを下ろすことで一気に雄々しさを増す。

Ricottaワルキューレロマンツェ製作委員会『ワルキューレロマンツェ』4話

その姿はまさに戦場に立つサムライ。
その勇ましさは他のフェイスガードをつけたサムライ、例えば2002年サッカーWカップの宮本選手や機動戦士ガンダム00ミスター・ブシドーにも劣らない。

このかわいい女の子とかっこいい騎士姿のギャップ、振れ幅が本作の魅力の一つだろう。

情報量の巧みなコントロール

ワルキューレロマンツェの原作ゲームは各女の子を1人ずつ攻略する、恋愛シミュレーションゲームではよく見かける形式になっているようだ。
だがアニメでは俗に担当回などと呼ばれるような、一人一人のキャラを1話ごとにじっくり描くということはしていない。
ワルキューレロマンツェのアニメ公式HPではトップページに6人の女の子が登場しており、仮に12話でそれぞれ担当回を置くとすれば2話ずつ、あるいは導入3話とラストに3話ずつと当番回1話ずつがスタンダードな構成になる。
それがアニメワルキューレロマンツェでは、一つのエピソードに多面的に女の子を関わらせ、物語トータルで見た時に担当回2話分を優に超える情報を詰め込んでいる。

例えば4話では勝利が価値の中心にある無口な少女リサと、騎士としての心構えを大切にする茜との決闘が描かれる。だがそれだけに留まらず、美桜が2人の決闘を見てジョストが好きだという自分の気持ちを再確認するというエピソードにもなっている。

8話の合宿も導入で社交的で明るい性格に見える少女、ノエルが父親の反対を振りきって合宿に参加する姿を見せることで本気さを見せ、初心者の美桜の成長に説得力を持たせるのと同時に、寝食を共にすることで各キャラの気持ちを吐露させるエピソードになっている。
その上生徒会長スィーリアと生意気な後輩フィオナはそれぞれの事情で合宿に参加しないということが、2人の抱える孤独の描写になっている。

これだけの情報を盛り込みながら、情報の洪水という印象を受けないのは重要な情報は各話に分散していることもあるのだろう。

4話で垣間見えたリサの勝利への気持ちは5話のお茶会で明確に言葉として発せられ、敗北にも価値があると言うスィーリア、そしてジョストが好きだからやるという美桜と鋭く対比される。

ノエルと父親の確執、そして妹への愛情という家庭事情も、5話のノエルのお宅訪問、6話の妹と散歩しているところへの遭遇と、他の話数からも見て取れる。
またノエルの妹への愛情は1話での「このサンドイッチは妹が作ってくれたものだからあげられないわ」という何気ない一言にも垣間見えるが、それは直後の貴弘のためにサンドイッチを作った美桜との対比にもなっており、その後に親友と言える仲の良さを見せる2人の決定的な違いにもなっている*1

このようにワルキューレロマンツェでは各エピソードに多面的に女の子を関わらせ、重要な情報は各話に分散して配置することで、より多くの情報を、より効果的に見せられるよう物語に盛り込んでいる。

エピソード単位のまとまりの良さ

ワルキューレロマンツェは前述の情報量の多さにもかかわらず、とても見やすく、内容がすっと入ってくる。
それはエピソードごとのまとまりが良いからだ。

合宿という一言でまとめられる8話はその典型であるし、茜とリサの対決でまとめられる4話、へレンズヒル観光でまとめられる6話などもそうであろう。

そういったエピソードの中でも、7話『風車の下で』は風車というあまり見かけない題材を中心にすばらしいまとめ方をしたという意味で、白眉と言っていいエピソードだ。
7話では雨宿りで風車に立ち寄ったスィーリアと茜が、脱いだ衣服が風で飛ばされてしまい、どうやって脱出するか悪戦苦闘することになる。
その衣服が飛ばされてしまうという発端からして風車の歯車が原因であり、裸を隠す、あるいは粉じん爆発でドアを破るために使ったのは風車で挽いた小麦粉であり、脱出時の衣服は見張り用として風車に用意されていた鎧であった。
女の子二人がろうそくを傍らに柔肌に縄を巻きつけたり、しゃせいと連呼したりする突飛な内容であるにも関わらず、物語に風車という芯がしっかりあることで統一感が失われていない。

さらに言えばこの話のメインの登場人物の1人であるスィーリアは小麦と関わりが深い。
スィーリアは貴弘に対して、じっくり関係を深めることについてお好み焼きを例に出して話しており、6話ではクッキーを差し出していた。
言うまでもなく2つとも小麦が主成分だ。

またスィーリアが大好きだというクマ。これをローマ字表記するとkumaとなる。
一方小麦をローマ字表記するとkomugi。
つまりkumaのうち、75%にあたるkとuとmがkomugiに含まれているため、クマ≒小麦と言える。

またクマは英語ではbearとなる。
これはビールを意味するbeerと一文字違いだ。
ビールの原料である麦芽は大麦を発芽させたもの、大麦と小麦は同じ麦、ということでここでもbear≒beer≒大麦≒麦≒小麦となり、7話の風車を中心としたまとまり、一貫性が徹底されていることを垣間見ることができる。

このようなエピソード単位のまとまりの良さ、一貫性がワルキューレロマンツェをとても見やすいものにしている。

恋愛ゲーム原作を1クールアニメに落としこむ匠の技

恋愛ゲームがアニメ化されることは珍しくないが、その際に問題になるのは尺の問題だ。
各キャラのエピソード、魅力を出来るだけ拾うことが求められてくるが、ゲームによっては1クール6時間程度では到底収まらない分量を持つものも多い。
ワルキューレロマンツェは原作をプレイしていないのでどのくらいの分量があるんだろうとネットで検索してみたら監督とプロデューサーの対談があって、あ、こりゃ俺の記事よりこっち見たほうがいいな、と思ったので寝る。

アニメ『ワルキューレロマンツェ』山本裕介監督×あらかわまさのぶPD対談 「『王道』を作り出す人と技術」(1/5) | 日本最大級を目指すアニメポータル「AniFav」 はてなブックマーク - アニメ『ワルキューレロマンツェ』山本裕介監督×あらかわまさのぶPD対談 「『王道』を作り出す人と技術」(1/5) | 日本最大級を目指すアニメポータル「AniFav」


[初回限定版] ワルキューレロマンツェ (1) 使用用途はお・ま・か・せ!キャラクター原案こもり けい描き下ろし「6人揃うとむふふ等身大布ポスター」(1)付き [Blu-ray]
[初回限定版] ワルキューレロマンツェ (1) 使用用途はお・ま・か・せ!キャラクター原案こもり けい描き下ろし「6人揃うとむふふ等身大布ポスター」(1)付き [Blu-ray]

*1:この違いは8話で貴弘にベグライターになってほしいと頼むノエルと騎士としての貴弘を見たいという美桜という対比としても表れる