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藤四郎のひつまぶし

プロの素人によるブログ

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サムライフラメンコと暴力性

アニメ サムライフラメンコ 思想 雑記


何気なくノイタミナの新作発表会を見ていて、2013年10月からの放送作品としてその存在を知ったサムライフラメンコ。
第一印象としてはTIGER&BUNNYのヒットを見て、そのキャッチコピー、「痛快バディヒーローアクション」と同じようなことをやるのかな? といったものだった。
そして同時に現在も展開中の作品と同じテーマの作品であれば、より細部をブラッシュアップしていかないとどうしても新規性の部分で先行する作品に劣ってしまうのでは? とも思った。

しかし放送が始まってみての第一印象はヒーローなりきりモノとでも言った感じ。
実力の伴わない夢見がちな青年羽佐間正義を、警察官の職務には忠実ながら、仕事とプライベートは分けて考える後藤英徳がたしなめるという、ギャグテイストを強く感じる作品だった。

そんなサムライフラメンコは1クール目終盤にさしかかり、かなり急展開を見せてきた。
その急展開の中で、私が初期のころにも感じていたある要素がよりクローズアップされているように感じたのでここに書き留めておきたいと思う。
その要素というのは暴力性だ。

サムライフラメンコの暴力描写にはややオーバーなものを感じていた。
3話の偽サムライフラメンコのバイクの扱いと戦闘シーンにその片鱗を感じ、4話でひったくりを走行中のバイクから引きずり下ろすサムライフラメンコや、すでに戦意がない暴漢に追撃を食らわせているフラメンコガールの姿などでよりその印象を強くした。
といってもそれらの描写はその後の人生を変えるレベルの大怪我や、命を失うといったところまでは踏み込まなかった。
だが大きく世界観が揺らいだ7話では警官が殉職し、その後も怪人が何度も爆死する。
そして9話では一介のビジネスマンである今野が拷問にかけられ生命の危機に晒されるといったところまで踏み込んだ。

ここまでの暴力描写になると、物語の深刻さは増すが同時に非日常感が強くなり、物語の軽さも損なわれる。
この作品がヒーローと怪人の「ごっこ」をコミカルに描きたいだけであれば、ここまでの表現は不要、あるいはマイナスとも言える。

私は制作陣がそういった部分に無自覚なままこのような暴力描写を入れたのだとは思わない。
作中で羽佐間がごっこではない、と述べているのと同様に、サムライフラメンコという作品自体が日常での正義とフィクションの正義をしっかり接続して描こうとしているのだと思う。
だからこそ暴力表現についてはえぐい、などと表現できるところまで踏み込んで描いている、いや描かなければいけないのではないか。

正義、あるいは秩序というものは暴力を抜きには存在し得ない。
暴力という言葉のニュアンスが正義や秩序という言葉に繋がりにくいならば、武力、または強制力と言い換えてもいい。

イェーリングは「強制を伴わない法は、燃えていない火というような、それ自体に矛盾を含むものである」と述べている。
現代日本社会が無秩序状態にならないのは、人々のモラルが高いことだけに起因しない。
他人の権利の侵害や、公共の福祉に反する行動が公権力によって是正されること、あるいは是正されるであろうという共通認識も秩序の維持の一翼を担っている。
逆に公権力の強制力が個人、あるいは反社会的勢力を抑える力を持たない国ではその国の正義、秩序を維持することが難しくなる。

日本が他国から容易に武力によって侵略されないのも、自衛隊という武力を持っているのに加え、世界随一と言っても過言でない軍事力を誇るアメリカの従属国であることが大きな要因となっている。
武力を持たず、武力を持つ国と友好関係を築いていない国は武力を持つ国の圧力を受けざるを得ず、場合によっては武力を行使され、その国の正義、秩序が脅かされる。
これは国際連合といった国家よりも大きい枠組みの組織の持っている強制力が、一部の大国の強制力を明確に上回っているわけではないことにも起因している。

圧倒的な強制力を持つ勢力が存在せず、複数の対立する正義、価値観をもつ勢力が並び立つ場合、そこには闘争と無秩序が発生する可能性が格段に増えるのだ。

この作品の舞台となる現代日本は、前述のとおり完璧ではないにしろ、一定の秩序が保たれた国だ。
それは警察という治安の維持が目的の一つである強制力を持つ組織が、完璧ではないにしろ、十分に機能していることを意味している。
そんな現代日本で警察と正義の方向性は似ているとはいえ、その組織とは明確に異なって強制力を行使するサムライフラメンコ、そしてフラメンコガールの存在は潜在的にだが悪の組織キングトーチャーと同じく警察の正義、秩序を乱す要因と言える。
実際に警察ではキングトーチャーの時とは規模が違えど、フラメンコガールたちの影響が無視できなくなると対策室が設置されている。

現在話の中核を担っている悪の組織キングトーチャーは作中での「最終回が近い」といったセリフや、公式HPに組織と関係なさそうな4人の追加キャラが紹介されていることから、おそらく1クール目で壊滅するのだろう。
そしておそらく2クール目では「2期」の展開をやるんじゃないかなと思う。
警察との共通の敵を失うことで、より強く認識されるであろうサムライフラメンコたちの正義と暴力、強制力が現代日本にどのような居場所を見つけていくのか。
またこれまで怪人の死に悩む羽佐間といった限られた部分でしか見えてこなかった正義と暴力の関係について、作品としてどんなメッセージを見せてくれるのか。
そんなことが「2期」では展開されるのではないか、あるいは展開して欲しいなぁ、などとサムライフラメンコの暴力描写を見ていて思うのだ。

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