世界征服の紹介
なんだこの世界征服、って本?
って思ったら、至道流星先生の雷撃SSガールの改題ということ。
この雷撃SSガール改め世界征服は、父の死で零細企業を継いだ主人公、朝倉陣が世界征服をすると豪語する少女、水ノ瀬凛とキャバクラで出会って、あれよあれよという間に世界を統べる男と対決するまで至るというお話。
ホントよく1巻でここまでいったなってぐらいスケールがインフレするお話です。
至道流星先生の作品だと、最近は大日本サムライガールという作品で外伝的な(?)コミカライズ、大日本さむらいがーる劇場が始まったりしています。
『大日本さむらいがーる劇場』 - 『4ページマンガ最前線』 | 最前線
これは至道先生の時代きていますね。
さてさて、この世界征服で私が凄いと思ったのは水ノ瀬凛の世界の認識と行動でした。
水ノ瀬凛は反則級の知性、人脈の持ち主。
単なる零細企業の一つだったアルセアマーケティング株式会社を見事に作り変え、ものすごい勢いでお金を稼ぎ、欲しいものを手にしていきます。
その手法はお世辞にも人に誇れるものだけではありません。
お縄につかないルールのギリギリのところをつき、人や企業の欲を存分に利用し、どこかで損をする人がいようとも気にしません。
世界はまっとうじゃないし、人はくだらない感情や欲で動くし、富は巧妙に築きあげられたシステムによって一方向に吸い寄せられる。
水ノ瀬凛は世界をそういうものだと認識しています。
そんなリアリストでありながら、凛は世界を征服して子どもたちがみんな楽しく過ごせるようなシステムを創りあげたいというのです。
現状認識が似た作品だと、最近のアニメだとPSYCHO-PASSと比較してみるのが面白いでしょうか。
堅牢なシビュラシステムによって統治された世界は、幾つもの納得出来ないことがありながらも、そのシステムを越えるものがなく、作中では乗り越えることができませんでした。
あるいはまどか☆マギカと比較してもいいかもしれません。
魔女化というしくみをまどかが壊しても、魔獣という新たな歪が出てしまっていました。
でも世界征服の水ノ瀬凛は多分違います。今のシステムとは違う、今のシステムよりよいものができると信じているし、それに向けて迷いなく突き進みます。
この乾いた現状認識と型破りな展開、潤いに満ちた理想のギャップが世界征服の最大の魅力かと思います。
そして経済版オレツエー小説という側面も見逃せません。
1巻で零細企業が世界と対峙する至るためには当然なのですが、ものすごい勢いでスケールがでかくなっていきます。
倍々ゲームどころか言葉通りの桁違いの成長をしていきます。
そのスピードは前述の型破りな手法とあいまって、黒い笑いを浮かべざるを得ません。
さらに現実とフィクションのシームレスな接続にも脱帽です。
私にはどこからどこまでがリアルで、どこからどこまでが虚構なのかかがさっぱり判断つきません。
DM業界に出版業界、投資に情報機関に陰謀論。
そういったものをどこからどこまで信じるか、どこからどこまでを虚構と笑うか、私の生半可な知識ではどうにもわからない部分が多すぎます。
どこが嘘だったかわからない、だけどいつの間にか非現実的なことが起こっている。
まるで一流の手品を見ているような、そんなエンターテイメント作品です。
世界を変えることを夢見ている、夢見ていた社会人、あるいは社会人になりかけている人を中心に騙されたと思って読んでほしい作品です。
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