相反するモノがテーマを際立たせる。例えば商業と趣味
「そう。自分の好きな漫画を描くということと、不特定多数のたくさんの人が求めているものを作るということの差分、それはかなり違うことで、その間には広いスペクトルがあるからさ。その差分を自分がどれくらいまで好きで、できるのかどうかを、段階的に少ないリスクから試していける。こんな健全なテスト環境はなかなかない」
「バクマン。は、コミケの描写がない。まるごと排除されていて、存在していない。そうして、そういう小さなリスクから試していく、っていう選択肢を描かない。一気に高リスクから始める。経歴的にも高校受験を捨てるし」
こちらの記事をなるほど面白いな、と読みました。
そして
「バクマン。がおそろしい一つの理由」を読んだけど必要ないから書いてないだけじゃね? - あざなえるなわのごとし
そうじゃなくって、ポイントは真城最高と川口たろうなんだよ。
真城最高が目指す漫画家の姿は川口たろうなんだ。
それは薄い本じゃない。
(中略)
閉じた狭い世界での二極対立。
それがバクマンの本質なんだと思う。
オレはね。
元の記事はサイコーたちにコミケを経験させろとは書いてないんじゃ? とは思いつつも、こちらはこちらでなるほどと思うわけです。
個人的にはバクマン。でコミケ、あるいはそれに類するものを取り入れる余地と意義はあったようにも思います。
サイコーの目的とは相反するものをあえて描くことで、サイコーの目的を明確にするために。
漫画家で食っていくのを諦めた人を描くという部分で。
個人的にバクマン。はマンガを書くのを辞めた人が結構ひどい目に合っている、あるいはマンガを書くのを辞めるひとはダメ人間みたいに描かれてるイメージを感じてました。
中井さんはその典型。
中井さんは漫画家を諦めて自宅に帰ったら自堕落な生活をする人になっていて、七峰くんに雇われるとちょっといい暮らしになる。
でも七峰くんにクビにされるとまたグダグダな生活になって、平丸のアシスタントになってまた生き生きとしだす。
怪盗チーターを書いてた人も漫画家を辞めていて七峰くんの元で講師として働きますが、これまたあまり肯定的に描かれてるようには思えませんでした。
萌え絵を書いてた石沢くんもニートになっていますし。
アシスタントの人たちは結構肯定的に描かれてるんですけど、もうちょっとマンガで食っていくのを諦めた人を肯定的に書いてもいいかなーとも思うんです。
ドラゴンボールで戦いについてこれなくなった人みたいな感じで。
いつもは安全なところにいてそれなりに暮らしているけど、最後に元気玉贈るときは力を貸すぐらいのイメージ。
マンガで食うこと諦めた人でも趣味でマンガを書き続けるって形はありかな〜と思います。
別にコミケじゃなくてもブログやHP、お絵かきサイトでもいいと思います。
原作にねじ込むなら港浦のもとでタントがなかなか調子が出ないときあたり。
漫画家を廃業するけど、マンガ自体は好きだし趣味で書き続けるよ、みたいにして去っていく人が出てくる。
その時に最高たちが好きなものを書けるのはいいかもなと思いつつ、やはりアニメ化の夢を実現させると気持ちを新たにする、ぐらいな感じで。
川口たろうを目標の一つとするサイコーたちはあくまでジャンプにこだわって、アニメ化してその後もマンガで食っていく生き方をするんだ、って改めて強調するのもありかなと。
敢えて相反するものを配置することで、その行動のすごさを強調するのもアリだと思うんです。
ジョジョ4部でボスを裏切ることになったとき、フーゴがジョバーナたちについていけなかったように。
いろんなものに手を出して、本筋がなんなのかよくわからない作品になるのは避けるべきだと私も思います。
特に言い訳みたいな形であれもこれもと積み上げていくと、よくわからない作品になってしまうでしょう。
ただ書きたいものを明確にするためには、それと相反する要素をぶつけてみるのもありかなーと思います。
まぁバクマン。とジャンプがコミケを扱うのは著作権だとか他にもいろいろ面倒が有りそうですが。
余談ですがコミケ経験者をライバルキャラで出すなら、コミケの部数を話題にすればすごさがわかりやすいかもとか思ったり。
数値化したの方がわかりやすいって誰かが言ってた!
最初は無名で10部も売れなかったのが1年で1万部売れるまでいったとか。
1万部は盛り過ぎな気がしますが。しかも売上100万部とかのコミックスを見ることも多いジャンプ読者にはスケールが全然違ってあんまり効果的ではない気もします。
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