ラノベのカラーページに進化の余地は?
最近本棚を整理しようと小説、マンガ、様々な単行本をスキャンしてて、ライトノベルでの巻頭カラーページの使い方ってマンガと結構違わなくね? これって最適解なの? との疑問がわいてきた。
ライトノベルとイラストの関係、カラーページの使われ方
ライトノベルとイラストの関係は深い。
ライトノベルとそれ以外を分ける条件の一つとして、イラストの有無が挙げられる場合があるくらい深い。
それは作中の表現に積極的にイラストを取り込んでいく作品、最近ならのうりんのような作品があることからもわかるし、本編でイラストの重要性をネタにする作品があることからもわかる。
「ぐ、ぐぬぅ。は、八幡。お前なら理解できるな? 我の描いた世界、ライトノベルの地平がお前にならわかるな? 愚物どもでは誰一人理解することができぬ深遠なる物語が」
(中略)
「まあ、大事なのはイラストだから。中身なんてあんまり気にすんなよ」
渡航『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』(ガガガ文庫)P177-178
ではそんなイラストが最も映える場所の一つ、冒頭のカラーページはどのように使われているんだろう?
自分の基準だと6つほどに分けられると思う。
1.本編中の1シーン
本編の盛り上がるシーンやサービスシーンをカラーにしたもの。
イラストに加えて本編の一部が書かれていることが多い。
アサウラ『ベン・トー サバの味噌煮290円』 (集英社スーパーダッシュ文庫)口絵
2.人物紹介
登場人物の絵と名前、場合によっては簡単な説明が付いているもの。
杉井光『生徒会探偵キリカ1 』(講談社ラノベ文庫)口絵
1の本編シーンとの合わせ技で、印象的なセリフなどと合わせて人物紹介をする場合もある。
平坂読『僕は友達が少ない 』(MF文庫J)口絵
3.作品イメージ・設定解説
本編に無いシーン、または厳密には本編の特定のシーンかもしれないけど、特定ができない、しにくいもの。
あるいは本編では描かれない設定などが記載されているもの。
渡航『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』(ガガガ文庫)口絵,大黒尚人『フルメタル・パニック! アナザー1 』(富士見ファンタジア文庫)口絵,
4.本編
白黒ページにはない、本編冒頭(?)のエピソードがカラーイラストの上に描かれるもの。あまり見かけない。
自分が見たことあるのはキノの旅とバッカーノくらい。
時雨沢恵一『キノの旅〈2〉the Beautiful World>』 (電撃文庫)口絵,成田良悟『バッカーノ!1710―Crack Flag』 (電撃文庫)口絵
5.タイトル(+イラスト)
マンガ単行本の巻頭カラーページの使い方
同じくカラーページのあるマンガをみてみると、作中のシーンを巻頭のカラーページに持ってくる場合は少ないと思う。
自分が知っている例は月刊ヒーローズで連載されているULTRAMANぐらい。
清水栄一,下口智裕ULTRAMAN(1)』 (ヒーローズコミックス)P2,P182
マンガの巻頭のカラーページは本編、あるいは作品イメージ(+タイトル、目次)になっている作品が多いように思う。
日本橋ヨヲコ『少女ファイト(1) 』(イブニングKCDX)P1,五十嵐藍『ローファイ・アフタースクール―五十嵐藍短編集』 (BLADE COMICS)口絵
ライトノベルの巻頭カラーページの効果的な使い方
ライトノベルが人物紹介をカラーに持ってくるのは理解しやすい。
本編の挿絵の量は限られている。
盛り上がるシーン中心に挿絵を入れていくと、主要キャラでイラストがないキャラが出てきてしまうかもしれない。
また最初にキャラのイラストを載せておくことで、本編で始めて出てきたキャラのイメージもつかみやすくなるハズ。
でも印象的なシーンを冒頭に持ってくるのは果たして効果的なのだろうか?
例えば本編途中にカラーで挿絵を入れるという選択肢はないのだろうか?
ソードアート・オンラインでは最新エピソード、アリシゼーション編が始まるとき、本編途中にカラーイラストが挟んであった。
川原礫『ソードアート・オンライン (9) アリシゼーション・ビギニング』 (電撃文庫)P210-211
本編途中でこれが出てきての第一印象は
「おいおい、なんか凄そうなの始まったぞ」
という感じ。
途中にカラーイラストがあるのが珍しいからもしれないが、すごくスペシャルな感じを受けた。
ソードアート・オンラインは特殊な例かもしれないけど、巻頭で前フリなしに見るカラーイラストと、物語を読み進めてバッチリのタイミングで出てくるカラーイラストでは後者のほうが印象的なように思う。
ライトノベルが巻頭にカラーを持ってくる理由
とは言うものの、ライトノベルが本編途中にカラーを持ってこない理由はいくつか想像できる。
一つはコストのため。
一つは冒頭のインパクトのため。
コストの問題
カラーページと白黒ページは一見しただけで紙が違うとわかる。
白黒ページの方は色がベージュっぽいのに対し、カラーページは光沢がある白だ。
もしかしたら違う種類の紙を綴じる場合、巻頭に入れるより本編途中に入れるほうが手間=コストがかかるのかもしれない。
またライトノベルではよくあるこういうページの構成がちょっとやりにくくなる。
カラーを本編途中に入れようとすれば、裏と表で最低2ページをカラーページ用の紙にしないといけない。
ライトノベルでよくある上のような構成にすると、カラーの裏が光沢のある白をバックにした文章になってしまう。
これは結構違和感あると思う。
なので自然に入れようとすれば、章の終わりや始まりに入れるか、挿絵が2ページ続くなどの構成が必要になってきそう。
このようなコストや構成の問題から、わざわざ本編途中にカラーページを入れるのではなく、巻頭にまとめているのかもしれない。
電子書籍化や工夫次第で新しい形式が主流になる可能性は
とまぁ2つほど仮設を立ててみたけど、この2つだったら電子書籍版では解決可能な問題に思える。
素人考えだけど、電子書籍ならカラーページをどこに入れてもコストは変わらなそうに思えるし、表1枚のみのカラーページも可能に思える。
また冒頭に使ったカラーページの文章を削って、本編の該当シーンでもう一度使うといったこともできそう。
とりわけ後者の巻頭カラーの再利用は既存の作品でもそんなに難しくないように思う。
またキノの旅など一部でしかみないが、カラーページに本編を乗せるのはライトノベルと親和性の高い手法のようにも思う。
なぜならライトノベルは冒頭に印象的なシーンを持ってくる場合が多いからだ。
例えば僕は友達が少ないは1巻冒頭が時系列的にはかなり後のインパクトのあるエピソードになっている。
隣人部メンバーと南の島でバカンスと思いきや、闇鍋をやっているという話だ。
水着のカラーイラストと、闇鍋のカラーイラストの2つ+本編を巻頭に持ってくるのは、インパクトがありつつそのまま本編に突入できて満足度が高いんじゃないだろうか。
文章量は調整しなければいけないけど、冒頭にインパクトのある話を持ってくるラノベなら、カラーページから本編を始めるのもありな気がする。
この辺各レーベルの編集部、あるいは作者、イラストレーターの方はどんなふうに思っているんだろう。
というかそもそもカラーページから本編が始まって欲しい、あるいは本編途中でカラーページが見たいって意見が少数派で、考慮に値しないのかもしれないけど。
ベストセラー・ライトノベルのしくみ キャラクター小説の競争戦略
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