ミス・モノクローム -The Animation-における電池
2013年10月現在、ミス・モノクローム -The Animation- というアニメが放送中だ。
このアニメの主人公、ミス・モノクロームはアンドロイド。
動力源は単3電池1本
となっている。
StarChild:ミス・モノクローム -The Animation-|キャラクター|ミス・モノクローム
この単3電池1本を動力源とするアンドロイドという設定とそこから派生する表現には制作者の秘められた思いが存在する。
まずミス・モノクローム -The Animation- の設定について確認したい。
ミス・モノクローム -The Animation- の舞台となっているのは日本、それもおそらく現代とそう変わらない時代の日本だ。
それは作中のコンビニの品揃えや、ねんどろいどが販売されていること、ゆるキャラが一定の知名度を持っていることなどからも伺える。
そして作中に登場する単3電池の種類も現代と変わらない。
マンガン電池、アルカリ電池、エボルタ。
現実とは多少スペックが違う可能性はあれど、現実のものと大きく違わないと考えていいだろう。
ミス・モノクローム製作委員会『ミス・モノクローム -The Animation-』2話(左、中)、3話(右)
そうなると当然の疑問が浮かぶ。
なぜミス・モノクロームは単3電池を動力源としているのかという疑問だ。
単3電池で動かせるものといえばミニ四駆。これなどは前に走るという単純な動きしかできない。
ミス・モノクロームに多少なりとも近いもので言えば、電動の犬のぬいぐるみだろうか。
これも緩やかな動きと数種類の鳴き声をあげることはできるが、ミス・モノクロームのような高度な演算、動きは不可能だ。
乾電池で動くものでミス・モノクロームにもう少し近いもの、というとセガトイズより夢ペットシリーズという製品が発売されている。
例えば夢いぬDXゴールデンレトリバーという製品はなかなか複雑な動きをし、少ないながらも特定の動作、言葉に対してリアクションを行う。
だがこの夢いぬDXゴールデンレトリバーは単1電池を6本使用する。
そしてミニ四駆も電動のぬいぐるみも単3電池2本から動くものが多い。
それに対してミス・モノクロームの動力源とされているのは単3電池「1本」。
ミス・モノクロームが単3電池のエネルギーだけで動いていると考えるのは不自然だ。
何らかの他の動力の利用、例えば太陽光発電を行っていたり、給油、あるいは炭水化物の補給などを行っていると考えるのが自然だ。
では何のための電池なのか? なぜ動力源が単3電池1本となっているのか?
それはミス・モノクロームが極めて人間に近い存在だからだ。
話は変わるが、人間の動力源とはなんだろう?
すぐに思いつくものとしては食事が挙げられる。
人は食事を取らなければ生きていくことはできない。
長期間食事を取らなければ体内に脂肪などの形で蓄えていたエネルギーは底をつき、餓死することになる。
だが人はパンのみにて生きるにあらず。
食事は生命の維持には必要だが、人が活動するにはそれだけでは足りない。
体のエネルギーだけでなく、精神にもエネルギーが必要なのだ。
人が摂取するもので、精神を高揚させるものがある。
例えばコーヒー。
コーヒー豆などの中に含まれるカフェインには覚醒作用がある。
眠気覚ましにコーヒー、というお約束を知らない人は少ないだろう。
例えばお酒。
こちらも適量を飲用すると精神を効用させる効果がある。
お酒を飲んで気が強くなった人やそこから起きたトラブルを見かけたことがある人は少なく無いだろう。
ミス・モノクロームにおける単3電池も、これらと同様の精神を高揚させるものだと推測できる。
さて、こうなってくるとミス・モノクローム -The Animation- という作品の構成要素の中に無視できない要素があると気づくだろう。
それはアイドルという要素。
第1話からミス・モノクロームは自分をアイドルと定義し、強いこだわりを見せている。
ミス・モノクローム -The Animation- は芸能界を描いた作品なのだ。
芸能界と精神を高揚させるモノ。こうなると単3電池が何を意味しているかは明白。
ドラッグだ。
芸能界における違法薬物は田代まさし、酒井法子といった、逮捕、そして有罪にまで至る事例が度々メディアを賑わせる。
そのような逮捕、起訴までいかずとも、疑惑というレベルならば今年に入ってからも何人かが報道されている。
そのような芸能界でミス・モノクロームが活動していること、ミス・モノクロームが単3電池を使うシーンの恍惚とした表情、筒状の物体に注射器は針、乾電池の+の突起を持つという形状の類似に通常2本セットで使うことの多い単3電池を一本単位で使う使用方法の類似。
ミス・モノクローム製作委員会『ミス・モノクローム -The Animation-』2話
これらは偶然の一致では片付けられず、単3電池がドラッグのメタファーとなっているのは疑いようがない。
なぜミス・モノクローム -The Animation- の制作者はこのようにドラッグを作品の中核に据えたのだろうか?
それはおそらくドラッグの危険性を訴えるためだろう。
乾電池を挿入する装置には危険を表す黄色と黒の縞模様がついている。
ミス・モノクローム製作委員会『ミス・モノクローム -The Animation-』1,2話
さらに3話でミス・モノクロームはエボルタを使い、前後不覚で恐ろしい威力の破壊活動を行っている。
これらはドラッグの素晴らしさを示すのではなく、むしろドラッグの危険性を示し、決して利用してはならないと戒めている。
さらに言えばこのドラッグを使っているミス・モノクロームはアンドロイド。
これはドラッグを利用している人は人間ですらない、というメッセージとも受け取れる。
このようにミス・モノクローム -The Animation- は薬物の恐ろしさを啓発するための作品だと言っていいだろう。
どうかこの制作者の志を理解し、薬物で不幸になる人が少しでも少なくなることを願わずにはいられない。
薬物乱用ダメ。ゼッタイ。